院長コラム

月経・妊娠と喘息

気管支喘息は、子供では女児よりも男児に多く、思春期以降は女性の方が多くなり、閉経を過ぎると男女差が縮小することが知られています。
このことから、喘息の発症には、女性ホルモンであるエストロゲンが関係していると考えられています。
今回は、「エストロゲンと女性のヘルスケア」(メジカルビュー社)を参考に、月経・妊娠と喘息について説明します。

 

月経周期と喘息発作

女性の喘息患者さんの30~40%は月経に関連して増悪し、入院を要する重症の喘息の約半数は月経周辺期に起きるといわれています。
特に、生命に関わるような発作の1/4は月経の初日にみられる、との報告があります。
月経のある女性の場合、排卵後に妊娠が成立しなければ、エストロゲンの分泌が減少し、子宮内膜が剥がれ月経となります。
つまり、喘息発作が月経初日前後に多いということは、エストロゲンの“急激な低下”という変動が関与していると考えられています。
喘息をお持ちの方は、特に月経前には喘息発作に対応できるように準備しておくといいかもしれません。

 

妊娠と喘息

喘息合併の妊婦さんは年々増加しており、妊婦さんの約3~8%が罹患しているとの報告があります。そして、喘息患者さんが妊娠すると、症状の改善・変化なし・症状の悪化が、1/3ずつになるといわれています。
もし、コントロールが不良で妊娠中頻回に発作が起きれば、母児ともに低酸素状態となるため、流早産、胎児発育不全、低出生体重児などに至る危険性があります。
気管支拡張薬や気管支喘息治療薬のほとんどは胎児に影響はありません。喘息発作を起こさないためには、積極的に薬物を用いて発作をコントロールすることが非常に大切です。

 

経口避妊薬(OC)の服用により、エストロゲンの急激な変動が抑えられ、喘息が改善するとの報告があるそうです。
月経困難症の治療薬である低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤)もOCと同じ薬剤です。
もし、喘息と月経困難症のある女性で、今のところ妊娠を希望されないのであれば、積極的にOC・LEPを服用されることをお勧めします。