院長コラム

更年期障害に対する治療法(1)~ホルモン補充療法(HRT)・漢方療法~

更年期症状は、のぼせ・ほてりなどの血管運動神経症状、不眠・不安・抑うつなどの精神症状、肩こり、腰痛、関節痛などの筋肉神経症状、腟・外陰部の乾燥感、灼熱感、疼痛、かゆみなどの腟・外陰部症状など、多岐にわたります。
また、その主たる原因は卵巣機能の低下ですが、加齢に伴う身体的変化、精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子が複雑に絡みあって症状が現れるといわれています。
そのため、更年期障害の治療法も様々であり、症状や合併症、背景に合わせて選択することになります。
今回は、当院で行っております更年期障害の治療法のうち、ホルモン補充療法(HRT)と漢方療法について説明します。

 

ホルモン補充療法(HRT)

更年期障害は女性ホルモンであるエストロゲン減少が主たる原因であるため、禁忌でない限り、不足したエストロゲンを補充するHRTが第一選択となります。特に、のぼせ・ほてりなどの血管運動神経症状や灼熱感・かゆみなどの外陰部症状に対しては非常に有効です。また、閉経後骨粗しょう症の予防・治療効果もあり、脂質異常症の改善や動脈硬化の予防効果も期待できます。
ただし、子宮を有している方の場合、エストロゲンのみの長期投与は子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクを高めてしまうため、子宮内膜組織の増殖を抑制する作用のある黄体ホルモン製剤を併用する必要があります。
尚、剤形は内服薬だけでなく、皮膚から薬剤が吸収される貼付剤やジェル剤もあります。当院で処方することが多い薬剤には、経口エストロゲン製剤の「ジュリナ」、エストロゲンの貼付剤である「エストラーナ」、ジェル剤である「ル・エストロジェル」「ディビゲル」、経口黄体ホルモン製剤の「デュファストン」「プロベラ」、エストロゲン・黄体ホルモン配合剤の内服薬「ウェールナラ」、貼付剤「メノエイドコンビパッチ」などがあります。

 

漢方療法

漢方薬は様々な生薬が含まれているため、1種類の薬剤で幅広い症状の改善が期待できます。副作用も比較的少なく、長期にわたって服用することもできるため、更年期障害の治療として漢方薬をご希望される方は少なくありません。
比較的体力が低下した方の血管運動神経症状には「当帰芍薬散」、精神不安などの精神症状が強い方には「加味逍遥散」、体力が中等度以上の方には「桂枝茯苓丸」などを中心に処方しています。
また、冷え・腰痛・関節痛には「五積散」、手足のほてりや足腰の冷えには「温経湯」、神経不安や不眠が強い場合には「加味帰脾湯」など、症状に合わせて様々な薬剤を併用あるいは切り替えしながら治療しております。

 

 

HRTと漢方療法は更年期障害に対する治療の柱であり、症状によっては併用することも少なくありません。どちらも2~4週間以内の使用で症状が軽減することが多いため、比較的早めに効果が実感できると思われます。もし、4~8週間以上の治療にもかかわらず改善しない症状がありましたら、他の薬剤や治療法を検討致します。