院長コラム

更年期女性にとっての運動の重要性

令和4年11月13日、世田谷246ハーフマラソンが開催されました。その他にも、マラソン大会やスポーツイベントが開催されるなど、体を動かすのに適した季節となっています。
その一方で、わが国の運動習慣のある女性の割合は、40歳~50歳代で約20%との報告があります。
今回、「女性更年期外来診療マニュアルTDCメソッド」を参考に、更年期女性にとっての運動の重要性について、情報を共有したいと思います。

 

更年期女性にとって運動は重要

閉経近くになるとエストロゲンという女性ホルモンの分泌が減少してきます。その結果、のぼせ・発汗、いらいら、抑うつ、不眠などの更年期障害がみられることがあり、骨粗しょう症や動脈硬化、認知機能の低下などのリスクが高くなることも知られています。
しかし、適度な運動習慣のある女性では更年期障害が軽く、精神症状、筋肉の強度、平衡感覚、メタボ、認知機能などの改善がみられ、生活の質が上がります。
また、心血管系の疾患、骨折、乳がんや大腸がんが、運動により減少するとの報告もあります。
このように、全ての更年期女性にとって、適切な運動習慣を身に付けることはとても大切です。

 

お勧めの有酸素運動

動脈硬化性疾患の予防のためには、中等度以上の有酸素運動をメインに、毎日合計30分以上、少なくとも週3日行うことが勧められています。
中等度の運動とは「3メッツ」以上の運動のことで、「メッツ」とは安静時を「1メッツ」とした身体活動の強さの指標です。
ちなみに3メッツは、通常速度のウォーキング、ボウリング、社交ダンスなどが相当します。また、有酸素運動のうち、スロージョギングやゆっくりした水泳で約6メッツ、ジョギングやエアロビクスは約7メッツのようです。
さらに、ダンベル体操やスクワット、昇降運動(高さ20cmの踏み台)など、筋力トレーニングを組み合わせることで筋力が維持・増強され、身体機能維持・向上につながります。

 

体重増加を減少させる運動

中高年以降の女性では、毎年0.5㎏の体重増加がみられるそうです。
体重増加を減少させるためにはカロリー制限も必要ですが、有酸素運動と筋力トレーニングを併用することが有用です。
1週間に150分の中等度以上の有酸素運動に、週2回以上の筋力トレーニングを追加することが勧められています。

 

運動習慣がない方は、無理せずできる範囲で始めましょう。
散歩や電動アシスト付き自転車での買い物、部屋の掃除や階段の上り下りといった生活活動も、3メッツ以上の“いい運動”になります。
何かとお忙しい更年期女性にとって、「こまめに体を動かす習慣を無理なく日常生活に取り入れること」が最も大切かもしれません。