院長コラム

更年期から始めるフレイル予防

フレイルとは、加齢に伴い身体機能障害や健康障害を起こしやすい状態をいいます。健康な状態と要介護状態の中間的な段階であり、適切な介入により再び健康な状態に戻る可能性があります。今後ますます高齢化社会になっていくため、寝たきり防止のフレイルの予防や治療は大変重要です。
今回は更年期女性とフレイルについて、「日本医師会雑誌 2019年11月号」、「女性医学ガイドブック 更年期医療編 2019年度版」(日本女性医学学会編)および先日開催されました整形外科の先生によるご講演「漢方で人生百年を支えよう~フレイル、サルコペニアケア~」を参考に、情報共有したいと思います。

 

 

フレイルの診断

様々な診断方法がありますが、最も使用されているのは次の評価方法(日本版CHS基準)です。

 項目    評価基準
体重減少 6か月で、2~3kg以上の体重減少
筋力低下 握力:18kg未満
疲労感  ここ2週間、訳もなく疲れた感じ
歩行速度 通常歩行速度1.0m/秒未満
身体活動 ①軽い運動・体操
     ②定期的な運動・スポーツ
上記いずれも週に1回もしていない

*0項目:健常、1~2項目:プレフレイル(フレイルの前段階)、3項目以上:フレイル

また、簡便なスクリーニングとして、以下の5項目による判定法(簡易フレイル・インデックス)も知られています。

□ 6か月で2~3kgの体重減少がありましたか?
□ 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
□ ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?
□ 5分前のことが思い出せますか?
□ ここ2週間、訳もなく疲れたような感じがしますか?
*3つ以上該当:フレイル、1~2つ該当:プレフレイル

 

 

更年期女性のフレイル予防の食事

身体的フレイルのうち、筋肉量が減少し、筋力および身体機能が低下した状態をサルコペニアといいます。サルコペニア予防には筋肉を強くする食事が有効です。

○ 適正なエネルギー摂取

エネルギー不足になると筋肉が減少します。炭水化物や脂質が不足している場合、筋肉を構成している蛋白質を使ってエネルギーを産生しようとするため、筋肉量は減少します。したがって、蛋白質だけでなく、エネルギー源となる炭水化物や脂質も適切量を摂取しましょう。

○ 蛋白質

体内で構成できない9つの必須アミノ酸は食品から摂取する必要があるため、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品を上手に組み合わせて摂取しましょう。

○ ビタミンB6

ビタミンB6は蛋白質の代謝を促進する働きかあるため、筋力向上には欠かせません。まぐろやかつおなどの魚類、レバー、肉類のほか、バナナ、サツマイモなどにも多く含まれています。

 

 

フレイルに対する漢方薬

フレイルは漢方医学でいう「未病」の概念に近いで状態あるため、その予防・治療には漢方薬が用いられることも少なくありません。フレイル予防にはしっかりと栄養やエネルギーを摂取することが大切ですが、食欲不振の方には「六君子湯」が有効です。更に、疲労倦怠感が強ければ“気を補う”「補中益気湯」、冷えがあれば“血の巡りをよくする”「十全大補湯」が用いられます。これらの症状に加えて抑うつ、不安感、不眠などの精神的症状があれば、幅広いフレイル症状に効果のある「人参養栄湯」がよく用いられます。

 

 

フレイルの予防には、適切な食事や身体活動が大切です。
是非、更年期の今からフレイル予防をし始めましょう。