院長コラム

授乳期でないのに乳汁が分泌する方へ

授乳期以外に乳汁の分泌を認めるものを乳汁漏出症といい、多くは高プロラクチン(PRL)血症が原因です。
今回は高PRL血症について説明します。

 

 

高PRL血症とは

PRLは脳にある下垂体前葉のPRL産生細胞から産生・分泌されるホルモンで、母乳の産生に関係しています。通常はPRL は抑制されていますが、何らかの原因により調節機構のバランスが破綻すると、PRLが産生・分泌され、乳汁が分泌されます。

尚、高PRL血症患者さんの50~80%に乳汁分泌が認められると言われています。

 

 

高PRL血症の原因

PRLを上昇させる因子には、生理的因子と病的因子があります。

《生理的因子》

運動、精神的ストレスが原因となることがありますが、多くは一過性で自然に治るため、あまり問題にはなりません。

《病的因子》

○ 薬剤性

PRLを上昇させる可能性がある薬剤として、向精神薬・抗うつ薬(ドグマチール、SSRIなど)、降圧剤(メチルドーパなど)、抗潰瘍剤(タガメットなど)、経口避妊薬などがあります。

○ 内分泌疾患

下垂体腺腫、甲状腺機能低下症、エストロゲン(女性ホルモン)産生の卵巣腫瘍などの疾患が原因となることがあります。

 

 

高PRL血症の治療

薬剤性の場合は、薬剤の中止・変更を検討します。ただし、向精神薬や抗潰瘍剤を処方されている精神科や内科の先生のご承諾が不可欠です。
また、それぞれの疾患に対する薬剤の効果が、乳汁分泌などの副作用よりも上回る時などは、薬剤をあえて変更しない方がいい場合もあります。

血液検査で甲状腺機能低下症が疑われた場合は、甲状腺専門医へ紹介し、血中PRLが非常に高値である場合には下垂体腺腫の可能性があるため、脳神経外科へ紹介致します。

上記の原因が否定的な場合は、ドパミン分泌を促し、PRL分泌を抑制する「パーロデル」、「テルロン」、「カバサール」による薬物療法を行います。

 

 

乳汁分泌を認める方の中には、脳腫瘍など重篤な病気が隠れていることがあります。
授乳期以外で乳汁分泌が見られる方は、服用している薬があれば「お薬手帳」をお持ちになり、是非受診して下さい。