院長コラム
当院における子宮腺筋症の薬物療法
器質性月経困難症をきたす病気に子宮腺筋症があります。
子宮腺筋症とは、子宮の筋層内に子宮内膜のような組織ができてしまい、月経の度に内膜組織が増殖を繰り返すことで子宮の壁が厚くなり、結果として子宮全体が大きくなってしまう病気です。
今回は、当院における子宮腺筋症に対するホルモン療法について情報を共有致します。
「ディナゲスト錠1.0㎎」が第一選択
ディナゲスト錠1.0㎎は子宮内膜症の治療薬として幅広く使用されていますが、「子宮腺筋症に伴う疼痛の改善」も適応となっているため、月経困難症を認める子宮腺筋症に対する薬物療法としては第一選択となります。
主な作用としては、直接子宮内膜組織の増殖を抑える事です。その結果、子宮の壁が薄くなり、子宮全体が小さくなります。
また、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を低下させ、排卵・月経を抑制する作用もあるため、過多月経による貧血の方にはとても有用です。
ディナゲスト錠1.0㎎服用の注意点
月経が始まって2~5日目から一日2回服用しますが、服用して数か月は不正出血をきたすことがあります。特に飲み忘れや、1日2錠を1回で服用されると出血期間が長引いたり、出血量が増えることもあります。
また、子宮体が10cm以上に腫大、あるいは子宮壁が4cm以上肥厚している子宮腺筋症の場合、いきなりディナゲスト1㎎2錠/日の服用を始めてしまうと大出血を起こすことがあり、禁忌となっています。
ちなみに、あまり大きくない子宮腺筋症で、経血量もあまり多くなく、月経困難症の治療を優先したい場合は、あえてディナゲスト0.5㎎2錠/日を使用することもあります。子宮腺筋症の縮小効果はあまり期待できませんが、鎮痛効果は1.0㎎と比べてもほとんど変わらず、不正出血は減少する可能性があります。
子宮内膜症・子宮筋腫を合併している時
子宮腺筋症に子宮内膜症や子宮筋腫が合併している方も少なくありません。
そのような場合は、偽閉経療法(レルミナ錠内服またはリュープロレリン皮下注など)を優先して行い、子宮腺筋症を小さくしてからディナゲスト錠(1.0㎎または0.5㎎)に切り替えることもあります(ちなみにレルミナ錠、リュープロレリン皮下注には保険診療上、子宮腺筋症の適応はありません)。
尚、ディナゲスト錠は子宮内膜症の治療効果は期待できますが、子宮筋腫を大きくさせてしまう事がありますので、定期的な超音波検査による診察は必要です。
子宮腺筋症に対するディナゲスト錠1.0㎎は大変有用ですが、副作用が強く、継続が難しい場合もあります。
また、子宮体が10cm以上に腫大し、子宮壁が4cm以上に肥厚していても、保険上偽閉経療法が行えないケースもあります。
そのような場合、妊娠を希望されないのであれば、子宮摘出術を検討する事がある旨、ご了解下さい。