院長コラム

当院における卵巣腫瘍の診察

女性の全生涯で卵巣腫瘍が発生する確率は5~7%いわれており、下腹部痛などの自覚症状がなくても、健診などで偶然に見つかることも少なくありません。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編)を参考に、当院における卵巣腫瘍の診察について説明します。

 

 

超音波検査

当院では、初期~中期の妊婦健診、子宮頚がん検診、月経痛・下腹部痛などに対する婦人科診察では、ほぼ全例に超音波検査(主に経腟超音波検査)を行っています。その際、卵巣に腫瘤を認めることがありますが、その腫瘤が悪性腫瘍の可能性が高いかどうかを判断することが必要です。

文献的には、超音波検査による良性・悪性の正診率は90%程度とされています。実際の診療では、いくつかの悪性を疑わせる特徴的な所見の有無から判断しますが、超音波検査のみで診断することが困難なケースもあります。その場合は、MRI検査や腫瘍マーカー検査の結果を踏まえて、総合的に判断します。

 

 

MRI検査

卵巣腫瘍の良性・悪性の鑑別や腫瘍の組織型を判断するためには、MRI検査、特に造影剤を用いた検査は欠かせません。MRI検査は超音波検査よりも、悪性に特徴的な所見を鮮明に描出することができます。当院でMRI検査のみを検査依頼する場合、その多くは田園都市線用賀駅の近くにあります「メディカルスキャニング」へ紹介しています。

尚、造影剤を用いるには、あらかじめ腎機能に問題がないかを血液検査(クレアチニン)で調べておきます。また、閉所恐怖症の方はMRI検査が困難である旨、ご了承下さい。

 

 

腫瘍マーカー検査

多くの悪性腫瘍では、ある種の腫瘍マーカーが異常高値になることが知られています。単なる卵巣がんのスクリーニングとしての有用性は否定的ですが、卵巣腫瘍が画像検査で認められた場合、腫瘍マーカーの測定は有用であるといわれています。当院では、CA125、CA19-9、CEAの3種類の腫瘍マーカーの組み合わせを中心に検査を行っています。

 

 

診断後の方針

超音波検査で明らかな悪性腫瘍と思われるケースや、良性と思われるものの非常に大きな腫瘍の場合は、当院で時間をかけて精査するより、早めに高次施設へ紹介しています。

超音波検査で悪性が否定できない腫瘍の場合や、子宮内膜症性嚢胞・皮様嚢腫などの診断を確実にしたい場合には、MRI検査、腫瘍マーカー検査を行います。その結果、手術を考慮した方がいいと判断した際には、高次施設へ紹介します。経過観察で問題ないと判断した場合は、3~6ヵ月後に超音波検査を行うようにします。

超音波検査で明らかな良性と思われる嚢胞でサイズも大きくなければ、月経周期などで消失する可能性があるため、1~3か月後再検すこことがあります。

 

 

手術の可能性がある場合、良性の可能性が高ければ腹腔鏡下手術を積極的に行っている施設、悪性の可能性が高ければ婦人科悪性腫瘍の診療経験が豊富な施設を紹介致します。
患者さんのお住まいや受診希望の曜日などによりますが、東京医療センター、東邦大学医療センター大橋病院、関東中央病院、厚生中央病院、昭和大学病院、慶応義塾大学病院、新百合ヶ丘病院など、当院の連携先の高次施設へ紹介しております。