院長コラム

子宮頚がん予防のためのHPVワクチンを接種される方が少しずつ増えている気配が(当院では)

この度日本産科婦人科学会から、一般の方々向けに「子宮頚がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」という情報が公開されました。
今回、この情報の一部を紹介させて頂きます。

 

 

わが国における子宮頚がんの最近の動向

子宮頚がん(浸潤がん)は年間年間10,000人以上が罹患し、3,000人近くの方が亡くなっています。特に、妊娠可能な20~40歳代の若い世代での罹患の増加が著しいといわれています。
尚、0期のがん(非浸潤)を含んだ子宮頚がんのデータでは、年間の罹患が32,000人を超えています。

 

 

子宮頚がんの原因

子宮頚がんの多くはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因であり、主に性的接触により感染します。HPVには多くの型が存在していますが、16型、18型など約13種類のHPVはハイリスクと呼ばれ、発がん性が高いウイルスと考えられています。

HPV自体はごくありふれたウイルスで、性行為の経験がある女性の50~80%は、生涯で一度はHPVに感染しているといわれています。ただし、HPVに感染しても約90%の方は自身の免疫力で排除し、一過性の感染で終わります。

HPV感染の約10%はHPVが排除されず、長期にわたって感染が持続すると軽度異形成となります。一部は更に進行し中等度異形成、更に一部は高度異形成や上皮内がんに進行します。この段階になると外科的治療が必要になりますが、治療できずに更に進行すると、子宮頚がん(浸潤がん)に進行します。

ちなみに、軽度異形成・中等度異形成・高度異形成から浸潤がんへ進行する頻度は、それぞれ約1%・10%・20%といわれています。
つまり、子宮頚がんを予防するには、いかに異形成を見つけて、浸潤がんになる前に治療できるかが大切になります。

 

 

一次予防と二次予防

次予防とは、HPVワクチンを接種することで、その後のHPV感染を遮断することをいいます。現在国内で承認されているワクチンは、特に発がん性が高い16型、18型の2つに対する2価ワクチン(サーバリックス)と16型、18型に加え尖圭コンジローマ(良性の性感染症)の原因となる6型、11型の4つに対する4価ワクチン(ガーダシル)の二種類があります。
ある報告では、HPVワクチンを接種していない女性の2.2%がHPV感染したのに対し、ワクチン接種の女性のHPV感染率は0.09%と極めて低率でした。ハイリスクHPVの型は他にもありますが、この16型、18型に対するワクチン接種だけでも子宮頚がんの60~70%を予防できるといいます。

次予防とは、異形成・上皮内がん(前がん病変)の段階で病変を発見し治療を行なうことで、浸潤がんへの伸展を防ぐことをいいます。その中心は子宮頚部の細胞診(子宮頚がん検査)であり、自治体でも積極的に取り組んでいますが、頚がんや前がん病変を有する人が検診で陽性になる割合(感度)は50~70%と十分に高いとはいえません。
ハイリスクHPVに感染しているかどうかを調べるHPVテストを細胞診と併用する案があり、現在様々な自治体で実験的に行なっていますが、その有用性が判明するにはもう少し時間がかかりそうです。それまでは、HPVワクチン接種という一次予防と定期的な細胞診という二次予防の組み合わせが、最も有効な子宮頚がん予防法といえます。

 

 

当院では世田谷区の子宮頚がん検診、HPVワクチン接種ともに力を入れています。HPVワクチン(サーバリックス・ガーダシルともに6ヶ月間で3回接種)については、世田谷区の小学校6年生相当年齢から高校1年生相当年齢の女子に対しては無料で接種可能です。その他の方は自費(再診の方:18,200円/回《税込》)となります。