院長コラム

子宮筋腫に対する薬物療法

子宮全摘・子宮筋腫核出術などの手術療法とは異なり、薬物療法は子宮筋腫の根本治療ではありませんが、患者様の症状を改善する上で、非常に大切な役割を担っています。
今回は、子宮筋腫に対する薬物療法について、当院の使用法を含めてお話致します。

 

 

薬物療法の位置付け

子宮筋腫に対する薬物療法には様々な目的がありますが、大きく二つの意味合いがあります。

(1) 子宮筋腫に伴う過多月経、筋腫内部変性などによる疼痛症状や周辺への圧迫症状を緩和する目的の対症療法

(2) 閉経への逃げ込み目的や手術療法前に筋腫を一過性に縮小させる目的の待機療法

 

 

対症療法の種類

○ 疼痛管理:
ロキソニンなどの消炎鎮痛剤
下腹部痛を抑制する桂枝茯苓丸などの漢方薬

○ 過多月経:
アドナ・トランサミンなどの止血剤
止血効果のあるキュウ帰膠艾湯などの漢方薬
子宮内膜を薄くするエストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)および
黄体ホルモン放出子宮内システム(IUS)

○ 過多月経に伴う貧血:フェルムカプセルなどの鉄剤、ふらつき・倦怠感にも効果がある人参養栄湯などの漢方薬

 

 

月経前・手術前の子宮筋腫縮小治療
~偽閉経療法(GnRHa療法)~

○ 皮下注射:リュープロレリン1.88など
      4週間ごと、4~6回施行

○ 点鼻薬:スプレキュアなど
    1日3回連日、4~6か月施行

投与初期には一時的に出血を認めますが、投与開始2か月目から月経は抑えられます。
副作用としては、更年期障害を認めることがありますが、当帰芍薬散などの漢方薬を併用することで、多くの場合症状が軽快します。

投与終了後、平均3ヶ月で月経が戻るため、その前に手術を行うのが理想です。
また、6か月の治療後、閉経に至らず、月経が再開してしまった場合は、6か月間をおいて、再度偽閉経療法を行うことがあります。

 

 

海外では、「閉経状態にさせず、また正常の子宮筋細胞に影響を及ぼすことなく、子宮筋腫のみ縮小させる」という薬剤が用いられています。
しかし、わが国では、残念ながら当分の間は認可されないと思いますので、「対症療法と偽閉経療法を組み合わせて、最終的に閉経や手術にもっていく」という従来の治療スタイルが、今後も主流になると思われます。