院長コラム
妊婦健診は当院、分娩は里帰りをご希望される方へ
ご家族の方による育児サポートの都合により、里帰り分娩をご希望される方は非常に多くなっています。
今回は、里帰り分娩をお考えの方へ、当院の方針についてお伝え致します。
里帰り分娩のメリットがデメリットを上回るのか?
里帰り分娩の最大のメリットは、ご実家のご家族(主に実母)の方に、育児のサポートをお願いできることです。特に、二人目以降の場合、入院中に上のお子さんを見てもらえることは、非常に助かると思います。
一方、合併症のある妊婦さんや妊娠中に何かトラブルがみられた妊婦さんの場合、情報提供書があるとはいえ、主治医が変わることで連続した診療・管理ができなくなるデメリットがあります。更に、行政機関のサポートシステム(地域の保健師さんとの連携など)は地域によって大きく異なり、里帰り先からお家に戻られた後、かえって大変な思いをされる方もいらっしゃいます。
また、ご主人は離れて生活することになるため、「蚊帳の外」に置かれてしまいます。その結果、育児に対してご夫婦の足並みが揃わず、子育ての仕方がわからないまま急に「お父さん」になることに対して、不安感をお持ちになるご主人もいらっしゃるようです。
本当に里帰り分娩することが母児にとって必要であるのか、お住まいのある地域での分娩は不可能であるのか、予めご家族皆さんでご相談されるといいかと思います。
原則として分娩施設の方針を優先的に
分娩施設の規模やエリアによって、分娩に関する方針は大きく変わります。ご自身が分娩を希望されている施設が、そもそも里帰り分娩を引き受けてくれるのか、何週までに分娩予約をしないといけないのか、妊娠初期から中期にかけての診察が必要なのか、妊娠何週までにご実家に戻らないといけないのかなど、分娩施設の方針を確認しないといけません。当院では、原則として分娩施設の方針を尊重して妊婦健診を進めて参ります。
多くの施設では妊娠初期に一度受診が必要なことも多く、それに併せて1回目の紹介状をお渡しします。また、通常は妊娠32週頃まで当院で健診させて頂き、妊娠33~34週からはご実家に戻って頂きます。ただし、分娩施設の方針で、もっと早い時期に転院が必要であれば、それを尊重します。また、合併症のある方や、切迫早産・骨盤位など異常がみられた時は、当院の方針として急遽早い週数での帰省を指示することもあります。
働いているお母さんは要注意
お仕事されているお母さんの中には、産休がもらえる妊娠34週を過ぎてから帰省することを計画されている方も少なくありません。ほとんどの場合、当院での最後の診察から帰省先での診察の約2週間は問題なく経過します。
ただし、切迫症状や破水などの異常はいつ発生するかわかりません。帰省する前に緊急事態になれば、帰省されることも当院で分娩することもできなくなります。もちろん、そのような緊急事態の場合は、母児の命・健康が第一優先ですので、当院が責任を持って地域の周産期ネットワークを利用して、高次施設へ紹介または母体搬送させて頂きます。しかし、そもそもこのエリアでの分娩ができないからこそ里帰り分娩を選択されているので、緊急とはいえ、お母さんご自身はあまりご納得のいく方法ではないでしょう。
そこで、妊娠32週以降に緊急事態になることは「想定内」とお考えになり、早めにご実家にお戻りになることを強くお勧めします。
帰省分娩を選択した方でも、この地域(当院や近隣の高次施設)で分娩せざるを得ない状況になる可能性があります。
そのため、万が一に備えて、その準備もしっかりして頂く必要があります。
もし、妊娠33週以降、特に妊娠36週以降になってもご実家に戻ることができない場合には、分娩管理の方針は、帰省先の施設ではなく、当院の判断にご一任頂きます様、何卒宜しくお願い申し上げます。