院長コラム

妊婦さん・授乳婦さんが使用できる薬剤 ~解熱鎮痛剤、抗アレルギー剤~

妊婦さんや授乳婦さんが薬を使用する際、赤ちゃんへの影響を考えて悩まれることが多いと思います。特にこれからの季節、解熱鎮痛剤、抗アレルギー剤を使用することが増えてきます。
今回は、「妊娠と授乳 改訂3版」(南山堂)などを参考に、これらの薬剤について情報共有したいと思います。

 

解熱鎮痛剤

通常用いられている解熱鎮痛剤の中には、妊娠後期(妊娠28週以降)に服用すると、胎児の心臓に悪影響を及ぼすものがあります。
そのため、妊娠期間通じて比較的胎児への影響が少ない「アセトアミノフェン(カロナール錠)」が第一選択となります。
ただし、鎮痛作用はマイルドであるため、妊娠28週未満の場合に限り、比較的鎮痛効果が高く、胃腸への副作用も少ない「ロキソニン錠」を使用することもあります。
尚、「ボルタレン錠」「インテバン錠」などは全妊娠期間通じて妊婦さんには“禁忌”ですので、服用しないようにしましょう。
授乳婦さんの場合、母乳への移行を考えて、小児の第一選択薬である「アセトアミノフェン(カロナール錠)」の服用を勧める先生も多いと思います。
ただし、一般的な消炎鎮痛剤の成分が母乳に移行する濃度は微々たるものであり、当院では分娩後の創痛、頭痛、後陣痛に対して「ロキソニン錠」、場合により「ボルタレン錠」を使用しています。

 

抗アレルギー薬

アレルギーに対して最も使用頻度が高い「第二世代抗ヒスタミン薬」のほとんどが、妊娠中も授乳中も安心して服用できます。
「妊娠と授乳 改訂3版」の総合評価では、妊娠中・授乳中ともに「ジルテック錠」「ザイザル錠」「クラリチン錠」が安全で、授乳期にはその他「アゼプチン錠」「アレグラ錠」「ディレグラ錠」なども安全に使用できるとされています。
ただし、妊娠前から自分に合った抗アレルギー剤を服用されているのであれば、妊娠期や授乳期にあえて切り替える必要はありません。
また、「シングレア錠(モンテルカストナトリウム)」といった「ロイコトリエン受容体拮抗薬」も、妊娠中・授乳中ともに安全に服用できるとされています。

 

解熱鎮痛剤も抗アレルギー剤も、短期間の服用で赤ちゃんに大きな悪影響を及ぼすことはありません。
ただし、妊婦中や授乳中に新しい薬剤を服用する時には、是非かかりつけの産科医にご相談下さい。
薬剤を上手に使って、妊娠中や授乳中の体調を管理していきましょう。