院長コラム
妊婦さんの新型コロナワクチン接種について ~令和3年5月日本産科婦人科学会の提言から~
現在、医療従事者や高齢者に対する新型コロナワクチン接種が全国的に行われています。近く、希望するすべての国民に対する接種も始まります。
この度、令和3年5月12日付で「日本産婦人科感染症学会」「日本産科婦人科学会」より、「COVID-19ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する方へ」(第2版)が告知されました。
今回はこの提言のポイントについて、情報を共有したいと思います。
①中長期的な副反応や胎児および出生児への安全性は確立していない。
②ただし、現時点でmRNAワクチンによる催奇性や胎児胎盤障害を起こすという報告はない。
③世界的に、接種のメリットがリスクを上回ると考えられており、妊婦をワクチン対象者から除外しない。
④特に、人口当たりの感染者が多い地域では、積極的な接種を考慮する。
⑤もし胎児異常があった時、その原因について混乱を招く恐れがあるため、器官形成期(妊娠12週まで)はワクチン接種を避ける。
⑥妊婦さんは、母児管理ができる産婦人科施設で接種することが望ましく、なるべく接種前後に超音波検査やドプラー検査などで胎児心拍を確認する。
⑦集団接種や産科がない施設での接種の場合、接種前後1週間以内に妊婦健診を受診する。
⑧接種後30分は院内で経過観察する。
⑨妊娠を希望される女性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるようにする。尚、生ワクチンではないので、接種後の避妊は必要ない。
現時点では、妊婦さんに対する接種について十分な情報はありませんが、新型コロナウイルスに感染した妊婦さんの一部は重症化することが知られています。
そのため、アメリカでは妊婦さんへの接種を推奨しており、イギリスでも当初はワクチン接種を奨励していませんでしたが、希望者には接種をすべきであると方針が変わったそうです。
我が国では、妊婦さんに対する国としての明確な方針はありませんが、前述の学会の提言が参考になるのではと思います。
妊婦さんの場合、接種する前には産科主治医に相談し、メリットとリスクに関してご理解、ご納得頂いた上で、接種するかどうか判断しましょう。
尚、令和3年6月11日現在、当院での新型コロナワクチン接種は未定ですが、予定が決まり次第ご案内致します。