院長コラム

妊娠悪阻(つわり)に対して処方することが多い漢方薬

当院では、軽度な妊娠悪阻(つわり)に対して、漢方薬を第一選択としています。
今回は、当院で処方することが多い漢方薬について説明します。

 

小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)

添付文書の効能・効果には、「体力が中等度の方の妊娠悪阻(つわり)、急性胃腸炎などの嘔吐」と記載されています。3種類の生薬が混合されており、比較的切れ味がシャープな印象があります。心窩部のつかえ感、めまい、動悸などを伴う場合にも有効のようです。
当院では、第一選択として小半夏加茯苓湯を用いることが多く、1日3回食前・食間にお飲み頂いています。
まず、1週間分処方し、副作用の有無や効果を確認して、追加処方あるいは他剤への切り替えについて検討します。 

 

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)

半夏厚朴湯は5種類の生薬からなり、つわりだけでなく、不安神経症、神経性胃炎に対しても用いられます。特に、のどが塞がる感じ(ヒステリー球)に有用であることが知られています。
当院では、気分の落ち込みや、不安感など精神症状がみられる妊娠悪阻の方に処方しています。
尚、半夏厚朴湯は細粒剤だけでなく錠剤タイプのものもあります。漢方を服用したいが細粒剤は飲めない、という方にもお勧めです。

 

人参湯(ニンジントウ)

人参湯は、比較的体力の低下した冷え性の方に対して、食欲不振、胃部停滞感、下痢など胃腸機能が低下している場合に用います。
当院では、体質が虚弱であり、小半夏加茯苓湯の効果が不良であった場合に、人参湯に切り替えることがあります。

 

半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

半夏瀉心湯には、妊娠悪阻(つわり)に対する保険適応はありませんが、悪心、嘔吐があり、軟便または下痢の傾向がある方に用いられます。
当院では、嘔気嘔吐は収まったものの、みぞおちのつかえ感、げっぷ、胸焼けなどの上腹部の消化器症状がみられる方に処方することがあります。

 

妊娠悪阻(つわり)症状が強い方には「プリンペラン錠」を用いますが、上記漢方薬を併用することも少なくありません。
また、点滴による治療が必要な方に漢方薬を処方すると、治療に必要な点滴の量を減らすことや、点滴治療の期間を短くすることも期待できます。
つわりの症状が生活に支障をきたし始めたら、悪化する前に漢方療法を始めることをお勧めします。