院長コラム

妊娠希望のない方の頻発月経の対応

頻発月経とは「月経周期が24日以内のもの」で、基本的には治療の必要はなく、経過観察となるケースが多いです。
ただし、頻回の月経が生活に支障をきたす場合や、貧血がみられる場合には薬物療法の適応になります。
今回は、現時点で妊娠希望のない頻発月経の対応について、「女性内分泌クリニカルクエスチョン90」(診断と治療社)を参考にお伝えします。

 

思春期女性の場合

頻発月経は「無排卵性」と「排卵性」に分類され、約60%は無排卵性といわれています。
初経直後の数年間は卵巣機能が未熟なため、無排卵性の頻発月経になりやすいですが、その多くは自然に正常排卵性の月経に移行します。したがって、基本的には治療の必要はありません。
ただし、月経困難症が認められ、頻回な月経が学業やスポーツなどの活動に支障をきたす場合には、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤)を用いて、月経周期を自らコントロールすることもできます。

 

性成熟期女性の場合

10代後半から40代前半の方の場合、排卵の有無と出血状況を確認するため、基礎体温を計測することが有用です。必要に応じて、卵巣ホルモン、甲状腺ホルモンなど各種ホルモン検査を行い、黄体機能不全、多嚢胞性卵巣症候群、甲状腺機能異常などの疾患が隠れているかどうかを確認します。
現在妊娠の希望がなければ、必ずしも無排卵に対して排卵を促したり、黄体機能不全に対して黄体ホルモンを補充する必要はありません。
将来的に妊娠を希望される方の場合であれば、治療後自然に正常月経周期が回復することを期待して、月経周期を人工的に安定させるホルモン療法を行うことがあります。
一方、この先妊娠を希望されない方の場合には、むしろ排卵や月経を止めるために、長期にわたりLEP製剤を連続服用することがあります。

 

更年期女性の場合

40歳後半以降の方の場合、頻回にみられる性器出血が月経ではなくて、子宮体がんなどの疾患が原因である可能性を考えなくてはいけません。そのため、まずは超音波検査や子宮頚がん・体がん検査などで、重篤な疾患を否定します。
閉経前は無排卵性の頻発月経をきたしやすい時期ですが、閉経になるまで治療しないことが一般的です。
もし、過多月経、月経困難症、貧血がみられた場合、LEP製剤などエストロゲンが含まれているホルモン剤は血栓症のリスクを高めてしまうため、当院ではあまり使用しません。
その場合は、血栓の副作用がなく、子宮内膜組織の増殖を抑制する黄体ホルモンの内服薬あるいは子宮内システム(IUS)を使用するようにしています。

 

頻発月経は、必ずしも治療が必要な状態ではありません。
ただし、ご年齢、妊娠希望の有無、生活への影響の程度などによっては、精査・治療が必要になることがあります。
気になる方は是非婦人科を受診して下さい。