院長コラム

妊娠中の歯周病や虫歯は早めに治療を

世田谷区では産前歯科健診を行っており、1回無料で受診することができます。
なぜ、妊婦さんの歯科健診が推奨されるのでしょうか?
今回は妊娠中の歯科診療についてお伝えします。

 

妊婦さんは歯周病や虫歯になりやすい?

妊娠中は内分泌環境の変化、唾液の分泌低下、つわり時の歯磨きの困難さなどのために、歯周病が増悪することが知られています。
また、口腔内が酸性に傾き、虫歯が進行しやすくなる、と報告されています。
妊娠中に歯科医師による健診を受け、必要な場合は早めに治療するようにしましょう。

 

妊娠中の歯科領域の単純X線撮影は大丈夫

歯科健診で治療が必要と指摘された方や、妊娠前からの虫歯や歯周病などが悪化した方は、更なる検査が必要になります。
その際に行われるのが単純X線撮影ですが、放射線被曝量は非常に少ないため、どの週数においても胎児与える影響はほとんどありません。
もしご心配であれば、単純X線撮影検査は妊娠12週以降にお願いし、X線から下腹部を守るプロテクターを付けさせて頂きましょう。

 

妊娠中の麻酔薬、抗生剤、鎮痛剤の影響は?

歯科で用いる局所麻酔薬については、胎児に影響を及ぼすほどの血中濃度にはならないので問題ありません。

抗生剤についてはペニシリン系、セフェム系、マクロライド系といった比較安全に使用できる薬剤を選択して頂きましょう。

鎮痛剤については、妊娠中通じて比較的安全に使用できる「カロナール(アセトアミニフェン)」を用いるのが無難です。
ただし、妊娠28週以降の鎮痛剤の使用は胎児に影響を及ぼすことがあるため、服用にあたっては当院へご相談下さい。

 

その他の歯科治療の注意点

使用薬剤以外の注意としては、妊娠後期の仰臥位低血圧症候群があります。妊娠後期に妊婦さんが仰向けになったとき、大きくなった子宮が下大静脈(心臓に戻る太い静脈)を圧迫します。すると、心臓に戻る血液量が減少し、その結果、心臓から全身に送られる血液量も減少するため血圧が低下します。
血圧の低下に伴い、気分不快、嘔気嘔吐、めまい、発汗、不安感、呼吸困難などの症状を来すことがあります。これらの症状を仰臥位低血圧症候群といいます。

もし、妊娠後期の歯科診療中にこのような症状があらわれた場合には、すぐに歯科医に伝えて、左側を下にする側臥位にしてもらいましょう。子宮による下大静脈の圧迫が解除され、症状はじきに消失します。

 

歯周病合併妊娠では早産や低出生体重児の危険性が高い、との報告があります。
妊婦さんは歯周病・虫歯の早期発見・早期治療に心がけましょう。