院長コラム

妊娠中の尿路結石症

我が国での尿路結石症罹患率は増加しており、現在女性の15人に1人は一生のうちに1度は尿路結石症にかかるといわれています。
今回は、妊娠中の尿路結石症について説明します。

 

 

妊娠と尿路結石症

尿路結石症のほとんどは腎臓から尿管にかけて発生する結石症で、カルシウム、尿酸などから作られます。

妊娠中は、増大した子宮によって尿管が機械的に圧迫され、腎盂や尿管の拡張が起こり、腎盂から結石が排出されやすくなります。
妊娠に尿管結石が合併する頻度は、200~2000妊娠に1例で、特に子宮が増大する後期に起こりやすいと言われています。

 

尿路結石症の診断

症状は、片側性の側腹部、腰背部、下腹部の激痛で、鼡径部や外陰部に放散痛を伴うこともあります。

尿検査では肉眼的血尿~顕微鏡的血尿が認められ、超音波検査で尿管拡張が見られることがあります。

確定診断は、通常の場合、腎尿管膀胱部単純X線撮影、排泄性尿路造影やCT検査を行います。妊婦さんには通常は行いませんが、妊娠中期以降で、精査が必要と判断され場合には単純X線撮影を行うことはあります。

 

尿路結石症の治療

尿路結石症の治療としては、まず疼痛のコントロールを行い、その後結石の除去に移ります。

疼痛に対しては、一般的に非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の坐薬が第一選択ですが、妊婦さんには使用できないこともあり、妊娠中にも使用できるアセトアミノフェンという陣痛剤やブスコパンという鎮痙薬、芍薬甘草湯といった漢方薬を使用することがあります。

また、結石が小さければ、自然に排出することも期待できるため、多量の飲水や補液により利尿させるようにします。飲水量の目安としては、食事以外に1日2.000ml以上ですが、清涼甘味飲料水、コーヒー、紅茶の過剰摂取は控える必要があります。
また、排石を促進するため、漢方薬である猪苓湯を処方することもあります。

更に、尿路結石により感染をきたし、それが原因で早産になるケースもあるため、必要に応じて抗生剤による感染予防を行うことがあります。

 

 

当院では、点滴で補液をしながら鎮痛剤、鎮痙剤を使用し、必要に応じて漢方療法も行います。
それでも軽快しないときには、「東京医療センター」など高次施設の泌尿器科へ紹介致します。