院長コラム

妊娠と不眠

日本人の5人に一人は不眠の訴えを持ち、20人に一人は睡眠薬を使用しているといわれています。
さらに、妊娠期ではほとんどの方に不眠症状が認められ、妊娠中は深い睡眠が十分に得られない、といわれています。
今回は、妊娠と不眠、そして妊婦さんでも服用可能な睡眠薬について説明します。

 

妊娠中の不眠

妊娠初期はむしろ眠気が強くなり、総睡眠時間は延長するといわれています。
妊娠中期には睡眠は正常化しますが、女性ホルモンや増大子宮の影響などにより、妊娠後期に向けて総睡眠時間は短縮し、不眠は顕著になります。

 

 

生活習慣・環境の改善

睡眠剤を服用する前に、生活習慣や環境を見直しましょう。

日中は適度な運動を

切迫症状などで安静が必要な方でなければ、日中にマタニティヨガ、ウォーキングなど、適度な運動をお勧めします。

尚、日中に眠くなりましたら、我慢せずにお昼寝して頂いても大丈夫です。

寝る前は、入浴などでリフレッシュ

入浴やヒーリング音楽、アロマなどで気持ちを落ち着かせることも有効です。

ただし、入浴直後は体温が高くなっており、すぐに床に入ると寝つきが悪くなりますので、少し時間が経ってからお休み頂くのがいいでしょう。

また、寝る前はスマホの画面を見ないようにしましょう。

暗い部屋で目を閉じているだけでもOK

ご自身では気付かない間に、実は眠っていることもあるといいます。暗い部屋で目を閉じているだけでも体も脳も休めていますので、無理に寝ようと思わない方がいいでしょう。

 

 

睡眠薬について

生活習慣の改善でも治らない不眠症に対しては、薬物療法も検討されます。

日本で睡眠薬として認可されている4種類のうち、特に妊婦さんに使用されることが多いベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系について説明します。

(1) ベンゾジアゼピン系

この系統の薬剤は、薬物依存性や呼吸抑制が比較的弱いため、現在広く使用されています。
中でも、超短時間型(半減期2~4時間)のハルシオン、短時間型(半減期6~10時間)のデパス、レンドルミン、中間型(半減期12~24時間)のユーロジン、ロヒプノール、ネルボン、長時間型のドラールなどは使用頻度が高く、どの薬剤も胎児への影響はほとんどないと考えられています。

 

(2) 非ベンゾジアゼピン系

この系統では超短時間型のマイスリー、アモバンが代表的な薬剤であり、これらも胎児への影響はありませんので、妊娠中に使用することが多い薬剤です。
 

 

 

通常用いられている睡眠薬は、妊娠後期はもちろん、妊娠前から妊娠初期にかけて継続的に服用していても、胎児への影響はないと思われます。
ただし、妊娠中の薬物療法の基本は、「必要最少の量を必要最短の期間用いる」ことです。
睡眠薬服用に際しては、是非我々にご相談して下さい。