院長コラム

妊娠したら歯科検診を~予防歯科の重要性~

妊娠すると女性ホルモンの増加やつわりの影響により、虫歯や歯周病になりやすいことが知られています。また、母体の歯周病が胎児に悪影響を及ぼす可能性もあります。
今回は「産婦人科診療ガイドライン 産科編2017」などを参考に、妊婦さんの予防歯科の重要性について説明します。

 

 

妊娠期の口腔内環境

妊娠すると非妊娠時と比べて女性ホルモンが増加します。ある種の歯周病原因菌は女性ホルモンが多い環境を好むため、著明に増殖して歯周病を引き起こします。

また、妊娠中はつわり、胃腸の動きの低下、子宮の増大に伴う上腹部の圧迫など、嘔気をきたす事が少なくありません。嘔気が強いと、飲水量が減少し唾液が減ります。唾液には、食後に酸性に傾いた口腔内の環境を中和させて、歯の再石灰化を促す作用があります。唾液が減少すると、口腔内が中和されず歯の再石灰化が進まないため、虫歯になりやすくなります。

更に、嘔気があると歯磨きが適切にできなくなり、磨き残しが増えます。また、虫歯になりやすい甘いものなどを食べる頻度が増えて、虫歯や歯周病が増加するとも言われており、ある研究では妊婦さんの1/3に歯周病が認められたとの報告もあります。

 

 

歯周病の母児に対する影響

歯周病を放置していると様々な炎症物質が発生し、血流を通じて子宮に流れていきます。炎症物質が多くなると、炎症を抑えるためにプロスタグランディンという物質が増加します。プロスタグランディンは子宮筋を収縮させ、子宮頸管を軟らかくする作用があります。そのため、歯周病の妊婦さんは早産・低体重児出生のリスクが高くなるともいわれています。

 

 

妊娠したら歯科検診を

虫歯や歯周病にかかっている方が妊娠を希望するようになりましたら、予め歯科を受診し治療して頂きましょう。また、歯痛や歯ぐきからの出血がみられない方でも、妊娠をされたら歯科検診でチェックして頂くようにしましょう。
尚、世田谷区の場合、妊娠中に1回、出産日から1年以内に1回、計2回の「産前・産後歯科健康診査」を無料で受けることができます。お住まいの自治体のホームページで、情報についいて是非ご確認下さい

 

 

歯周病は狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などの生活習慣病にも影響を及ぼすことが知られています。
妊婦さんはもちろんですが、中高年女性の方にも歯科検診を受けて頂くメリットがあります。
ちなみに私は、古くからの友人である歯科医の先生に、半年に1回は歯のチェックをして頂いております。
皆様も、かかりつけの歯科医をお持ちになり、定期検診を受けて頂くことをお勧めします。