院長コラム

外科的閉経に伴うトラブルのサポート

子宮筋腫、子宮腺筋症といった良性疾患や子宮頚がん、体がん、卵巣がんといった悪性疾患に対して、子宮や卵巣を摘出することがあります。
卵巣を両側摘出した場合はもちろん、卵巣を温存していた場合でも、血中の女性ホルモン(エストロゲン)が低下し、更年期障害や膣・外陰部の不快症状を認めることも少なくありません。
今回は、手術による閉経に伴うトラブルに対してのサポートについて説明します。

 

ホルモン補充療法(HRT)

子宮がある方に対するHRTは、減少しているエストロゲンの製剤を補充するだけでなく、黄体ホルモン製剤の併用が必要になります。
というのも、エストロゲン製剤のみ長期に使用すると、子宮内膜が増殖し、子宮体がんのリスクが高まってしまうからです。
したがって、子宮内膜増殖を抑制する作用のある黄体ホルモン製剤を併用することで、子宮体がんのリスクを抑えます。
ただし、子宮を摘出した後であれば子宮体がんになる心配がないため、エストロゲン製剤単独で問題ありません。
尚、子宮体がんの進行具合や卵巣がんのタイプによっては、HRTができないケースがあります。

 

漢方療法

進行した子宮体がんの方や血栓症既往のある方など、術後にエストロゲン製剤を用いることができない場合や、HRTでも改善しない更年期障害(特に精神症状など)に対しては、漢方薬を用いることがあります。
一日2~3回の服用継続が必要なことや、独特な風味がすることが欠点となりますが、症状に合わせて様々な種類から選ぶことができ、比較的副作用も少ないため、多くの方に有用な治療法です。

 

膣・外陰レーザー治療(モナリザタッチ)

急激なエストロゲン濃度の低下は、膣の乾燥感、外陰部の灼熱感、性交痛、排尿障害といった、泌尿生殖器系のトラブルを認めることがあります。これらの症状は、HRTでも改善が困難なことが少なくありません。
そのような方に対して、膣・外陰レーザー治療が奏功することがあり、当院では「モナリザタッチ」を使用しています。
膣内、膣入口部、大陰唇にレーザーを照射することで“日焼け”状態を作り、再生力を利用して皮下や粘膜下のコラーゲンを増やし、ふかふかで潤いのある状態にしていきます。
保険診療でなく自費診療(一回目33,000円、2回目以降55,000円<消費税込み>)となりますが、一つの選択肢としてお勧めしています。

 

上記以外でも、更年期障害に対してプラセンタ(メルスモン)の皮下注や、自律神経調整薬(グランダキシン錠)の処方を行うことがあります。
また、抑うつ症状が強い方には、抗うつ薬(SSRI:レクサプロ錠など)を使用しています。
当院では、お一人おひとりの症状や状況に合わせて、必要に応じて他科の医師とも相談しながら、最善と思われるサポートを行って参ります。