院長コラム

外用剤の有効な活用方法~ヒルドイドを中心に~

先日、「皮膚疾患の診かたと治療のコツ」というセミナーに参加してきました。埼玉医科大学の皮膚科の先生から、外用薬を最大限に活用する方法についてご講演があり、多くのことを教えて頂きました。
今回は、そこでの学びの一部、主に血行促進・皮膚保湿剤である「ヒルドイド」の情報を共有したいと思います。

 

 

ヒルドイドの薬理作用

皮膚は水分の蒸発や外鼻からの異物の侵入を防ぐため、「皮膚バリア機能」が備わっています。そして、皮膚疾患の予防・治療にはバリア機能をいかに保つかが重要になります。そのためには皮膚の潤いが大切ですが、皮膚欠乏症などで保湿因子が減少し、皮膚に緒水分量が低下し乾燥すると、神経線維が表層まで伸びてしまい、痒みを感じやすくなります。

ヒルドイドはヘパリン類似実質製剤といわれており、水分を引き入れる保湿能が高いことが知られています。これにより、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚バリア機能を回復させます。

ちなみに、ヒルドイドの添付文書の効能・効果には、皮脂欠乏症のほかに、血栓性静脈炎(痔核含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結や疼痛)、外傷後の腫脹・血腫・筋肉痛・関節炎などが挙げられています。また、「妊娠中の投与に関する安全性は確立してない」と記載されていますが、これまで胎児への影響は報告されておらず、当院でも多くに妊婦さんに処方しておりますが、全く問題ありません。

 

 

外用剤の種類と特徴

○ ソフト軟膏:油分がメイン

程よく延ばすことができ、皮膚表層を厚く覆うことができます。そのため、皮膚乾燥の治療開始時の第一選択になります。ただし、欠点としてはべた付く感じが強いことが挙げられます。

 

○ クリーム:油分と水分が半々

適度に延び、べたつきはあまり強くありません。

 

○ ローション:水分がメイン

広く延ばすことができるため、広範囲の患部に使用しやすく、べたつき感もあまり気になりません。

 

○ フォーム:水分のみ「

容器から噴出した後に白色の泡となるタイプで、広範な患部を素早く塗布できます。4タイムの中で、最もべたつき感がありません。

 

 

ヒルドイドの使い分け

○ 症状による使い分け
湿疹が多い場合や乾燥が強い場合はソフト軟膏を第一選択とし、改善してきたらべとつきの少ないクリームやローションに切り替えます。

 

○ 季節による使い分け
秋から冬の乾燥期は油分の多いソフト軟膏やクリームを使用し、夏には使用感がいいローションやフォームを選択します。

○ 時間帯による使い分け
朝の忙しいときは、短時間で塗布が可能なローションやフォームを使用し、夜の入浴後はソフト軟膏やクリームでしっかり保湿します。

 

 

部位ごとの塗布量の目安

塗布量の目安としてFinger Tip Unit (FTU)が用いられます。シフト軟膏・クリームのチューブの場合、人差し指の先端から第一関節までを1FTU(約0.5g)とします。

1回塗布量の目安として。顔・頚:2.5FTU、胸部・腹部:7 FTU、片腕:3 FTU、片手:1 FTU、片足:6 FTU、片足:2 FTUといわれています。

 

 

妊婦さんの皮膚乾燥や掻痒感に対してヒルドイドのソフト軟膏を処方することが多いですが、あまり効果がない場合は、塗布量が十分であるか確認して下さい。テカッていれば、必要十分な量を塗布しているといえます。
もし、十分に塗布したにも関わらす皮膚症状が改善しない場合は。ステロイド外用剤への切り替えや併用を検討します。