院長コラム

吸引分娩の適応と方法

分娩中、赤ちゃんの頭部が腟口付近まで下降している状況で、できるだけ早めに分娩を終了させる必要が生じた場合、吸引分娩を行うことがあります。
今回、「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」などを参考に、吸引分娩の適応と方法について説明します。

 

吸引分娩の適応

  • 妊娠高血圧症候群などの合併症
  • 著しい母体疲労
  • 子宮口全開大以降、分娩が遷延または停止
  • 胎児機能不全(分娩監視装置の胎児心拍数パターンの異常)

 

吸引分娩の条件

  • 児頭骨盤不均衡がない事
  • 児頭が十分に下降している事
  • 牽引5回、あるいは総牽引時間が20分以内に赤ちゃんの娩出が可能と判断できる事

 

吸引分娩の実際

  • 局所麻酔の上、会陰切開を行います。
  • 児頭の適切な場所に吸引カップを装着し、陣痛発作に合わせて牽引します。
  • その際、子宮底圧迫法(クリステレル胎児圧出法)を補助として行うことがあります。

 

吸引分娩のリスク

  • 母体の軟産道裂傷、多量出血や血腫形成をきたすことがあります。
  • 赤ちゃんの頭皮損傷、頭血腫、帽状腱膜下血腫をきたすことがあります。
  • 母体、赤ちゃんの状況によっては、分娩後に高次施設へ搬送となる場合があります。

 

当院では内診や超音波検査所見を参考に、吸引分娩での娩出が可能であり、最善であると判断して行っています。
ただし、数回の牽引で児頭下降が不良な場合や、総牽引回数が5回、あるいは吸引カップ初回装着から20分経過しても分娩に至らない時には、吸引分娩を中止します。
その際、鉗子娩出術または帝王切開術が可能な高次施設へ母体搬送させて頂く旨、ご了承下さい。