院長コラム

働く女性の月経関連トラブル

月経困難症、過多月経、月経前症候群(PMS)などの月経関連トラブルは多くの働く女性にみられ、症状が強いほど仕事に影響を及ぼすことが知られています。
今回は「よぼう医学」(2022年春号)の特集記事などを参考に、働く女性の月経関連トラブルについて説明します。

 

生活習慣の見直し

運動・食事・睡眠は心身の健康を支える三本柱ですが、月経関連トラブルの予防や軽減のためにも重要です。
ある調査によると、1回あたり45~60分、週3回以上の運動が月経痛を軽減させたとのことです。
また、適切な運動習慣は良眠を促し、精神的・身体的ストレスを軽減させることが知られており、PMSの緩和にも有効であると思われます。
食事に関しては、血糖の急激な変動がイライラを増強させます。精製されていない炭水化物を主食としてしっかり摂取し、血糖の変動を緩やかにすることが気持ちを安定させるために有用です。同時に、良質のたんぱく質、カルシウム、鉄などの栄養素もバランスよく摂取しましょう。
月経困難症には、体を温める作用のあるショウガや根菜類を使ったスープなどがお勧めです。
尚、喫煙している方は禁煙するだけで月経痛などの症状が改善する場合がありますので、加熱式も含めてタバコを吸わないように心がけましょう。

 

月経困難症の薬物療法

月経困難症とは、月経に随伴してみられる身体的・精神的症状です。下腹部痛・腰痛に対しては鎮痛剤が主に用いられており、月経が開始する前から服薬するとより効果が期待できます。
その他、子宮筋の緊張をほぐす作用や、骨盤内の血行を促進させる作用をもつ漢方薬を処方することも少なくありません。
尚、痛み物質を産生する子宮内膜自体を薄くさせる事で月経痛を緩和させる「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)」や「黄体ホルモン製剤(内服薬、黄体ホルモン放出子宮内システム:IUS)」といったホルモン治療が最近では治療の中心となっています。

 

過多月経の治療

前述のLEPやIUSを過多月経の治療に用いることもありますが、子宮筋腫・子宮腺筋症が原因の場合、人工的に一時的に閉経にする「偽閉経療法」によって筋腫を小さくしたり、肥厚した子宮壁を薄くすることがあります。
尚、薬物療法では改善しない場合は、筋腫を摘出する手術、子宮壁を薄くする手術、あるいは子宮全体を摘出する手術といった外科的治療に踏み切る場合もあります。

 

PMSの薬物治療

PMSの原因はいまだにはっきりしていないため、漢方薬、鎮痛剤、抗うつ薬などが治療の主流となっています。
ただし、排卵した後の黄体ホルモンの影響や、月経前の卵胞ホルモン・黄体ホルモンの急激な減少がPMSの要因である可能性もあるため、排卵を抑制し、血中ホルモン濃度を安定させるLEPはPMSの治療としても重要視されています(月経困難症も認める場合は保険診療となります)。

 

労働人口に占める女性の割合が4割を超え、働く女性の健康支援が国の重要課題となっています。
このような中、月経関連トラブルは“我慢すべきもの”ではなく、“予防・治療すべきもの”に変わってきています。
当院では月経関連トラブルの改善のため、お一人おひとりに合った治療を提供して参ります。