院長コラム
ホルモン補充療法(HRT)の効果
更年期に入り、エストロゲンという女性ホルモンの分泌が低下すると、のぼせ、ほてり、発汗、いらいら、抑うつ、不眠などの更年期障害が出現することがあります。
また、自然閉経前に両側卵巣を摘出した場合も、卵巣から分泌される女性ホルモンが急激に低下することにより、更年期障害と同様な症状が見られます。
これらの症状に対して有効な治療が、ホルモン補充療法(HRT)です。
HRTとは?
エストロゲンの欠乏により引き起こされた症状を、エストロゲンを補うことで軽減する治療法です。
ただし、子宮がある方にエストロゲンのみ長期に投与し続けると、子宮内膜増殖症や子宮体がんの頻度が高くなるため、子宮内膜増殖を抑制するため、プロゲスチンという黄体ホルモンを併用します。
更年期障害に対する効果
さまざまな更年期障害の中でも、のぼせ、ほてりといったホットフラッシュに対する効果は著明で、1週間で症状が激減する方も多くみられます。
その他、不眠、発汗、関節痛、腟乾燥感などにも有効なケースが多く、いらいら感、不安感、抑うつなどの精神症状にも効果を示すことが少なくありません。
骨に対する効果
エストロゲンが欠乏すると、骨が溶け出し、骨量が減少し、骨異粗しょう症が進み、骨折しやすくなります。骨折すると寝たきりになる可能性が高いため、骨折はもちろん、骨量を減らさないことが大切です。
HRTは骨が溶けるのを抑制し、骨密度を高めます。それだけでなく、関節保護作用、運動機能改善作用、姿勢バランスの改善作用もあるため、転倒しづらくさせて、骨折を防ぎます。
コレステロールへの影響
投与方法にもよりますが、悪玉コレステロールといいわれるLDLコエステロールを低下させ、善玉コレルテロールといわれるHDLコレステロールを上昇させます。
また、血管の内皮の機能を改善することで、動脈硬化を抑制することも期待できます。
血糖への効果
内服によるHRTは血糖およびインスリンを低下させ、インスリン抵抗性を改善する、との報告があります。
もちろん、糖尿病の治療としては使用できませんが、糖尿病の新たな発症を抑制することは期待できます。
アルツハイマー病への影響
HRTにより脳血流が改善するとの報告や、アルツハイマー病発症のリスクを低下させる可能性が指摘されています。
皮膚に与える効果
HRTにより、皮膚のコラーゲン量が増加し、皮膚の厚みが増す可能性が指摘されています。
また、皮膚の表層組織のきめ細やかさや皮膚結合組織の粘弾性の改善効果が期待できます。
その他にも多くの働きがあるHRT。
当院では、患者様の症状や体質などに応じて、HRTを行っています。