院長コラム

ホルモン補充療法の経口剤と経皮剤の使い分け

更年期障害・卵巣欠落症状・閉経後骨粗しょう症に対するホルモン補充療法(HRT)には、様々な薬剤が使われます。
特にエストロゲン製剤には、内服タイプの経口剤と、テープやゲルといった経皮剤があります。
今回は、産婦人科情報誌「産婦人科navi 」(2021年5月富士製薬工業株式会社発行)を参考に、経口剤と経皮剤の使い分けについて説明します。

 

エストロゲン製剤の種類と特徴

<経口剤>

  • プレマリン錠625㎎:

悪玉コレステロール(LDL-C)低下作用 善玉コレステロール(HDL-C)増加作用

  • ジュリナ錠 5㎎:

1錠/日 脂質代謝に影響せず  2錠/日 骨密度増加効果あり

  • ウェールナラ錠

黄体ホルモンが配合  「閉経後骨粗しょう症」のみ保険適応

<経皮剤>

  • エストラーナ(テープ)

2日ごとに貼り換え

  • ディビゲル(ゲル状)

毎日1袋1㎎塗布

  • ル・エストロジェル(ゲル状)

毎日1プッシュ(0.54㎎)または2プッシュ(1.08㎎)塗布

・メノエイドコンビパッチ(テープ)
週2回貼り換え(月・木、火・金など)

 

経皮剤の特徴と欠点

経皮剤は経口剤と異なり、胃腸に負担をかけずに、薬の成分が皮膚から吸収されて血中へ移行します。また、肝臓への負担が少ないこと、中性脂肪増加作用がないこと、静脈血栓塞栓症のリスクが少ないことなど、様々なメリットがあります。
一方、貼付部位や塗布部位に皮膚炎をきたすことがあるため、肌が弱くかぶれやすい方には使用を避け、内服薬を用います。
また、子宮を有している方は黄体ホルモン製剤を併用する必要があります。そのため、黄体ホルモンが配合されているメノエイドコンビパッチ以外の経皮エストロゲン製剤を使用する場合には、別個に黄体ホルモン製剤を服用しなくてはならず、飲み忘れに注意が必要です。

 

経皮剤が望ましい方

胃腸が弱い方、軽度な肝機能低下(重度の肝疾患はHRT禁忌)の方、胆嚢炎・胆石症の方には経皮剤を使用します。
また、血栓症のリスクと考えられる肥満、高血圧、糖尿病、中性脂肪が高値の方や片頭痛をお持ちの方も、経皮剤が望ましいといわれています。

 

経皮剤を使用して、皮膚炎の出現や出血の増量・持続がみられた場合は、経口剤へ変更することがあります。
反対に、経口剤から始めて、状況で経皮剤に変更する場合もあります。
「経口剤と経皮剤のどちらがいい薬か」という問題ではないので、有効性や副作用を評価した上で使用薬剤を検討して参ります。