院長コラム

スポーツされている女性にみられる健康トラブル

女性アスリートをはじめ、日頃から積極的にスポーツをされている女性は最近増えてきてきました。
適切な運動自体は心身の健康にとって重要ですが、激しい運動による健康被害には注意が必要です。
今回は、特に思春期から性成熟期の女性で、スポーツをされている方に多い健康トラブルについて、大塚製薬株式会社の資料(日本女性医学学会後援)を参考に情報共有したいと思います。

月経周期異常(エストロゲン低下)
正常な月経周期は25~38日と言われており、それ以外の周期は月経周期異常となります。特に、これまでみられていた月経が、3か月以上止まっている状態を続発性無月経と言います。ちなみに、15~18歳で初経がみられた場合を遅発月経、18歳になっても初経がみられない場合を原発性無月経と言います。
ある調査では、女性トップアスリートの約4割に月経周期異常がみられたと、報告されています。
激しいスポーツをされる方の月経周期異常の原因として、利用可能エネルギー不足(運動などによる消費エネルギー>食事による摂取エネルギー)が指摘されています。
利用可能エネルギー不足の状態が長期間続くと、脳から分泌される卵巣(卵胞)を刺激するホルモン分泌が低下し、その結果、卵胞から分泌されるエストロゲンとういう女性ホルモンの分泌も低下します。
エストロゲンの長期間の低下は無月経だけでなく、後述の骨量低下・骨粗しょう症のリスクが高くなり、疲労骨折に繋がる可能性があります。
ちなみに、無月経になりやすい競技は、「体操」が多く、「新体操」「フィギュアスケート」「長距離陸上」「トライアスロン」が続きます。

骨粗しょう症・骨折
エストロゲンには、骨が溶けるのを防ぎ、骨量を増やす作用があります。思春期はエストロゲン濃度が急上昇する時期であり、それに伴って骨量も急増し、20歳ごろピークを迎えます。
もし、この時期に無月経(エストロゲンの分泌低下)になってしまうと、骨が溶けて骨量が減少し、骨折しやすくなります。
さらに、利用可能エネルギーの減少に伴い低体重(やせ)になると、骨への負荷・刺激が低下し、骨量減少が進んでしまいます。
ちなみに、10代アスリートを対象にした疲労骨折発生率の調査では、正常月経周期群では約10%であったのに対し、無月経群では約40%であったと報告されています。
このことから、無月経(エストロゲン低下)は疲労骨折のリスクを大幅に増加させてしまう、と言えます。

鉄欠乏性貧血
血液の中で酸素を運搬する役割を担っているのが、赤血球のにあるヘモグロビンで、その構成には鉄が不可欠です。鉄が不足すると、ヘモグロビンが減少し、鉄欠乏性貧血となります。さらに、足裏に強い衝撃が加わる運動では、踵を打ち付ける衝撃で赤血球が破壊されてヘモグロビンが飛び出てしまい、鉄欠乏性貧血になることがあります。
もちろん、ヘモグロビンの産生に必要な鉄、タンパク質、ビタミンなどの栄養素の摂取が少なければ、鉄欠乏性貧血のリスクが高まります。
鉄欠乏性貧血になってしまうと、疲労感、動悸、めまいなどの症状が表れ、パフォーマンスが低下します。

10代~20代は、人生の基礎になる時期です。
月経周期異常(エストロゲン低下)・骨粗しょう症による疲労骨折・鉄欠乏性貧血を防ぐには、バランスのとれた食生活で必要な栄養素とカロリーを摂取するとともに、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを保つことで、使用可能エネルギーが不足しないようにする事が大切です。
それでも月経不順やパフォーマンスの低下がみられた場合は、早めに婦人科などのクリニックを受診し、ホルモン異常や貧血になっていないか、血液検査をして頂くようにしましょう。