院長コラム

サイトメガロウイルス感染が疑われる母児の検査について

サイトメガロウイルス(CMV)は、ヘルペスウイルスと同じグループで、母児感染を引き起こす病原体です。ただし、ヘルペスウイルスは、主に分娩中の産道感染であるのに対し、CMVは妊娠中、胎盤を通じて母体から胎児へ感染します。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン 産科編2020」を参考に、CMV感染が疑われる母児の検査について説明します。

 

妊婦さんのCMV検査は希望者のみ

現在、妊婦さんに対する血性抗体スクリーニング検査は推奨されていません。その背景には、①IgM抗体(最近の感染であることの指標)が陽性であるからといって、必ずしも妊娠中の初感染とは限らないこと、②たとえ胎児への感染が確認されたとしても、胎児に対する治療法が確立されてないこと、などがあります。
ただし、CMVを含んでいる可能性がある小児の唾液・尿と接触した場合や、超音波検査にて胎児発育不全、脳室拡大、小頭症などが認められた場合は、CMV検査をご希望される妊婦さんに対して抗体検査を行っています。もし、CMV IgM抗体が陽性となった場合、国立成育医療研究センターへ紹介させて頂きます。

 

新生児聴覚スクリーニングで判定保留の場合

先天性CMV感染は、先天性難聴の主要な原因の一つです。
当院では、検査希望がある赤ちゃんに対して、出生後3~4日後に新生児聴覚スクリーニングを行っております。1回目で「判定保留」となった場合は翌日に再検し、再び「判定保留」となった赤ちゃんは、原則として国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科へ紹介しております。
また、先天性CMV感染の鑑別として、生後3週間以内に赤ちゃんの尿を用いたCVM検査を行うようにしました。
もし、先天性CMV感染が疑わしい場合には、国立成育医療研究センター新生児科へも紹介させて頂く方針です。

 

妊娠する前に感染した方の場合でも、妊娠中の再感染や再活性化で胎児へ感染する可能性があります。
ただし、そのリスクは1.4%程度ですが、妊娠中の初感染の場合は32%と報告されています。
できるだけ妊娠中の初感染を避けるために、妊婦さんは子供のおむつ交換や鼻水・よだれの処置後には、十分な手洗いを心掛けましょう。