院長コラム

コロナ禍の精神的症状に対する漢方療法

東京都を含めていくつかの都府県では未だに緊急事態宣言発令中であり、予断を許さない状況が続いています。
国内での新型コロナウイルス感染拡大から1年がたちますが、ステイホームや自粛生活などストレスフルな状況が続き、様々な精神的症状に悩まされている方々が増えているようです。
今回は、先日開催されたツムラ株式会社主催のWEBセミナーの内容を参考に、コロナ禍の精神的症状に対する漢方療法について情報を共有したいと思います。

 

症状1:不眠

新型コロナウイルス感染に対する不安から不眠症をきたす方も少なくないようです。
一般的に、不眠の治療として「ベンゾジアゼピン系」の薬剤が主流ですが、ふらつきによる転倒や意識障害など、重大な副作用をきたす可能性があります。
そこで推奨されているのが、「酸棗仁湯(サンソウニントウ)」です。効能・効果は「心身が疲れ弱って眠れないもの」であり、通常1日7.5gを2~3回に分割し、食前または食間に服薬して頂きます。場合によっては、就寝前に2.5~5.0gを頓服することもできます。
また、ベンゾジアゼピン系薬剤に酸棗仁湯を併用することで、ベンゾジアゼピン系薬剤の服薬量を減らすこともできるとのことです。
不安が強く眠れない方には、お勧めの漢方薬です。

 

症状2:いらいら感

ステイホームが長引くと、いらいらして不機嫌になってしまうことがあります。
神経が高ぶっていらいらし、怒りやすい状況の時には、「抑肝散(ヨクカンサン)」が有用です。
特に、いらいらして眠れないときにはお勧めの漢方薬です。
また、体質的により虚弱な方で、いらいらなどの症状が慢性的な方には、比較的胃腸への負担が少ない「抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)」が適していると思われます。
産婦人科的には、月経前症候群(PNS)や更年期障害に対して処方することが多い漢方薬です。

 

症状3:倦怠感

コロナ禍の精神症状として倦怠感を訴える方も多く、運動量の減少に伴う体力低下にも注意が必要です。
精神的にも肉体的にも元気をつけるためには、「人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)」が大変有用です。人参養栄湯は食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血にも効果があり、比較的長期に服用することで、心身の活気が蘇るのではと思われます。
尚、当院では、お産後の疲労感が強い褥婦さんに対して処方することが多い漢方薬です。

 

「ウィズ・コロナ」の時代、精神症状をうまくコントロールする事が大切です。
そのためには、漢方薬を適切に利用することが有用と考えています。
特に、月経前、分娩後、更年期など、女性ホルモンの変化とともに精神症状がみられる方は、悪化させないためにも漢方療法をご検討下さい。