院長コラム

「緊急事態宣言」発令中の里帰り分娩に関する当院の考え

2020年4月7日、日本産科婦人科学会より妊婦さんに向けて、急な帰省分娩の検討は避けるように、との通達が出されました。その理由として、移動により感染拡大のリスクが高まること、受け入れ先施設の負担が増えることなどが挙げられます。
今回は、現時点での里帰り分娩に関する当院の見解についてお伝え致します。

 

 

「里帰り分娩」自体がリスク因子

新型コロナウイルス感染症の件がなかったとしても、当院では里帰り分娩をあまりお勧めはしていません。主な理由としては、紹介状で情報提供するとはいえ、診察が分断されることはあまり望ましいことではないこと、また、行政の関与が必要になった場合、居住地と実家のそれぞれの管轄保健所同士の連携がうまくいかず、産前産後の切れ目のないサポートが困難になる恐れがあることなどが挙げられます。さらに、ご主人が出産直後の育児に参加できないこともデメリットの一つです。そのため当院では、原則として「居住している地域でのお産」を勧めております。

そうは言うものの、育児に関してご実家の方々のお手伝いが必要な方も少なくありません。そのような方に対しては、医療施設間や行政機関同士の連携の充実に努め、より安全に里帰り分娩できるよう、サポートして参ります。

 

 

すでに里帰り先の施設で分娩予約済みの方

最近は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、帰省された後2週間は自宅で待機することが義務付けられている所もあるようです。通常は、妊娠経過が順調な妊婦さんの場合、遅くとも妊娠34週からは分娩施設での診察が必要になります。そのため、妊娠32週にはご実家についていないといけません。少しゆとりを考えれば、妊娠30~31週に紹介状をお書きし、早々に帰省先へお戻り頂くことが理想的です。

反対に、妊娠30週よりも早めに帰省することについては問題ありませんので、ご相談下さい。ただし、一旦帰省されたら、東京の感染拡大が収束するまでご実家で留まることをお勧めします。

 

 

里帰り分娩予定であったが、急遽東京で分娩せざるを得なくなった方

東京にお住まいで、妊婦健診を都内のクリニックで受けていたけれども、分娩予約していた里帰り先から受診を断られたケースや、妊娠34週頃まで東京にいないといけないため、妊娠32週までに帰省することはできなくなってしまったケースなど、当初予定していた里帰り分娩が困難になった方もいらっしゃると思います。

当院では、近隣(車で20~30分圏内を目安)にお住まいの方で、リスクが低く妊娠30週までの方であれば、できるだけ診察させて頂き、もし当院での分娩が可能と判断した場合は、分娩予約を取らせて頂きます。
ただし、診察の結果、高次施設での分娩が必要と判断した場合は、責任を持って他施設へ紹介させて頂く旨、ご了承下さい。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大が今後どのようになるのか先行き不透明ですので、分娩場所をどこにするかを悩まれている妊婦さんも多いかも知れません。
そのような時には、
①現在居住している地域で分娩することが原則

②どうしてもご実家の方々の育児サポートが必要な場合は、里帰り分娩を検討
③新型コロナウイルスは人の移動で感染が拡大
の3点を踏まえて決定しましょう。