院長コラム

「エクオール」による動脈硬化予防・認知症予防の可能性

11月11日は「介護の日」の日です。多くの方に介護を身近なものとして捉えて頂き、それぞれの立場で介護を考え関わって頂く為に、厚生労働省が介護に対する啓発目的で制定しました。
要介護の原因として、動脈硬化に起因する脳卒中、脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症などがありますが、女性ホルモンであるエストロゲンが動脈硬化や認知症の予防に重要な役割を担っている、といわれています。
今回、エストロゲン様作用を持つ「エクオール」の動脈硬化や認知症に対する影響について説明します。

 

 

「エクオール」とは

大豆イソフラボンの一種であるダイゼインは、腸内細菌によって代謝されエクオールという物質を産生します。このエクオールはエストロゲンとよく似た化学構造式を持っていおり、エストロゲン様作用を有しています。

しかし、エクオールを産生する腸内細菌は全ての方が持ち合わせている訳ではありません。日本人の場合、約50%といわれているため、いくら大豆を摂取しても、半分の方は大豆のエストロゲン様作用が期待できません。また、エクオール産生能を持つ女性も、必ずしも毎日大豆を摂取できるとは限りません。
したがって、全ての方がエクオールの恩恵にあずかるためには、エクオールを直接摂取することが求められます。

 

 

動脈硬化予防の可能性

高血圧、糖尿病、LDLコレステロールは動脈硬化のリスク因子といわれていますが、これらの因子に与えるエクオールの影響に関する研究報告があります。

イギリスの閉経女性を対象にした平均血圧の研究では、エクオール産生能を持つ女性では、産生能を持たない女性に比べて血圧が低い傾向がみられたそうです。

また、エクオール非産生の閉経女性に対して、エクオール10mgを12週にわたり投与したところ、糖尿病の指標であるHbA1c、LDLコレステロール、CAVIという動脈硬化の指標が改善した、との報告もあります。

以上から、エクオール産生能は動脈硬化の予防にいい影響を与える可能性があり、非エクオール産生の女性であってもエクオールを服用することで同様に動脈硬化予防が期待できる、といえるでしょう。

 

 

認知症予防の可能性

現在、わが国には460万以上の認知症患者さんがいらっしゃいますが、根治療法は確立しておらず、いかに早期発見し、進行を抑制するための早期介入ができるかが、重要なポイントです。

アメリカで行われた、閉経女性に大豆イソフラボンを2.5年間摂取してもらうという研究によると、エクオール産生者は、非産生者に比べて認知機能が改善傾向を示したとのことです。

また、わが国の研究では、エクオール産生者は非賛成者に比べて、正常加齢と認知症の中間と位置づけられる軽度認知障害リスクが1/4程度であったそうです。

以上から、エクオール産生能の有無が認知機能に影響を与えている可能性があり、エクオールの摂取が認知機能によい影響を与えるかもしれません。

 

 

更年期医療に対するエクオールの役割は大きく、現在幅広い効果が認められていますが、今後は更年期からシニアにかけての動脈硬化や認知症の予防といった観点からも、エクオールへの期待が膨らみます。
また、エクオールはエストロゲン様作用を持つ一方で、乳腺や子宮内膜に対しては抗エストロゲン作用(エストロゲンの作用を抑制する作用)も有しており、乳がんなどの既往によりホルモン補充療法が行えない方でも服用できるため、非常に幅広い方々に対してその効果が期待できます。
当院では、大塚製薬のエクオール「エクエル」を販売しています。更年期女性のみならず、シニア世代の方も是非ご相談下さい。