院長コラム
閉経後女性の腟・外陰部の不快症状への対応
閉経前後から老年期にかけて、女性ホルモンの低下や加齢に伴い、腟および外陰部の乾燥、かゆみ、灼熱感、性交痛などの不快症状を訴える女性が増えてきます。これらの症状を閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)といい、様々な対応・治療が試みられています。
今回、「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編)を参考に、閉経後女性の腟・外陰部の不快症状への対応について説明します。
外陰部のケア
腟の入り口が外陰部は尿や便、体液などによる刺激を受けやすい場所ですので、日頃から適切なケアを心掛けることが大切です。
刺激が強い石鹸を使用すると、かえって外陰部の皮膚を傷めてしまう可能性があるため、弱酸性で低刺激の石鹸(コラージュフルフル泡石鹸など)を使用し、指の腹などで優しく汚れを落とすことが重要です。
また、性交の際、腟入口部に痛みを感じる場合には、潤滑ゼリー(スプリングゼリーなど)を利用すると性交痛が緩和されることがあります。ただし、潤滑ゼリーは対症療法であり、かえって刺激・炎症を引き起こす可能性もあります。
外陰部のケアとして最近注目されているのが「アノワ41Dジェル」です。保湿作用やにおいを抑える作用だけでなく、細胞の修復・再生や抗菌・抗アレルギー作用も期待できます。また、腟内に塗ることで、腟内常在菌のバランスを整える働きがあります。
薬物療法
エストロゲンの低下が腟・外陰部不快症状の原因となっているため、エストロゲンの局所あるいは全身投与が有効な場合があります。
局所的な投与として、比較的マイルドなエストロゲン製剤である「エストリール腟錠0.5mg」などを連日腟内に挿入する方法があります。腟錠の場合、ほとんど全身的な副作用がないため、高齢の方でも使用しやすい薬剤です。ただし、原則として腟錠は医師が挿入することになっているため、連日の通院が困難な場合は、内服薬の「エストリール錠」を処方することがあります。
GSM以外に更年期障害や骨粗しょう症が見られる場合には、ホルモン補充療法(HRT)による全身投与が一般的ですが、エストロゲン製剤のみの使用では、子宮内膜増殖症や内膜がんのリスクが上昇するため、子宮がある方の場合、内膜増殖を抑制する作用がある黄体ホルモン製剤を併用する必要があります。
レーザー治療
今年改訂された産婦人科診療ガイドラインで、初めて腟・外陰部レーザー治療が記載されました。当院では、外陰部レーザー治療である「モナリザタッチ」を導入しており、1~3回の施術で、腟粘膜の栄養状態改善、上皮細胞のグリコーゲン増加、コラーゲン繊維の増加、線維芽細胞活性化、腟内細菌叢の改善などが期待できます。
自費診療のため、当院では1回目88,000円、2回目77,000円、3回目66,000円、4回目以降55,000円(消費税込み)の料金設定となっていますが、HRTでも改善しない腟・外陰部の不快症状や、乳がんなどの治療後でHRTが施行できない方には、特に有用であると考えられます。
腟・外陰部の不快症状は、なかなか他人に相談しにくいため、お一人で悩まれている方も多いのではないでしょうか。
できれば症状が軽いうちに、ご遠慮せずに診察にいらして頂ければと思います。