院長コラム

分娩予定日の決め方

正確な分娩予定日の決定は、流早産、胎児発育不全、過期妊娠などの診断に必要であるため、妊娠初期に行うことになっています。
今回、「産婦人科診療ガイドライン産科編2020」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編)を参考に、分娩予定日の決め方ついて説明します。

 

 

1. 特定できる排卵日・胚移植日から決定する

分娩予定日は、「受精日を妊娠2週0日」として計算する決まりになっています。基礎体温を連日記録している方で、グラフから排卵日を特定できるのであれば、排卵日=受精日として予定日を計算します。

人工授精の場合は、一般的に施行日を妊娠2週0日として計算し、凍結胚移植の場合は、胚移植した日と培養日数から排卵日(受精日)相当の日を計算して、予定日を決定します。
つまり、生殖補助医療によって妊娠した場合は、子宮内での妊娠が確認された後、不妊治療の主治医の先生からご本人に予定日が伝えられることになると思います。

 

 

2. 妊娠8~10週の頭殿長(CRL:頭からお尻までの長さ)から決定する

超音波で計測されたCRLの値は、妊娠8週~11週2日(CRL:14~41mm)の範囲で±3.9日の誤差であり、実際の妊娠週数との差が最も少ないといわれています。改定されたガイドラインでは、排卵日が不明であれば、最終月経開始日にかかわらず、妊娠8~10週のCRLから予定日を決定するとしています。

ただし、妊娠8~10週のCRLの計算でも誤差があるため、当院では、月経周期が28日周期かつ月経開始から13-14日頃に性交があった場合、妊娠9週頃のCRL値から計算された妊娠週数が、最終月経から計算された妊娠週数と比べて、3日以内であれば「最終月経から計算された予定日」を、4日以上差がある時は「CRLから計算された予定日」を採用することにしています。

ちなみに、多胎妊娠の場合でも単胎の基準値を用い、発育差を認めた場合は大きい児を基準に予定日を決定します。

 

 

3. 妊娠11週以降の大横径(BPD:頭部の横幅)から決定する

排卵日が不明で、妊娠8~10週に受診できなかった方は、妊娠11週以降に予定日を計算することになります。ただし、妊娠11週を超えると胎動などの影響でCRLの誤差が大きくなるため、頭部の横幅の長さであるBPDを計測して予定日を決定します。

妊娠11週以降でも予定日は計算できますが、週数の経過とともに誤差も大きくなります。胎児発育を正確に評価するため、妊娠8~10週に妊婦健診を受けて、できるだけCRLから予定日を決定するようにしましょう。

 

 

ガイドラインでは、分娩予定日は妊娠初期(妊娠13週6日まで)に決定するとされています。
妊娠14週以降の予定日決定では、1~3週間の誤差が生じてしまい、胎児発育などの正確な評価が困難であり、生まれた後の新生児成熟度評価が必要になります。
妊娠13週まで産科を受診していない方、定期健診をあまり受けていない方はハイリスク妊婦となり、当院では高次施設へ紹介することにしている旨、ご了承下さい。