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院長コラム

閉経前後の子宮内膜症への対応

子宮内膜症は女性ホルモンであるエストロゲンによって増悪するため、多くの場合閉経後に軽快します。
しかし、中には閉経前後に子宮内膜症の症状に悩まされる方もいらっしゃいます。
今回は、「臨床婦人科産科2020年6月号」(医学書院)を参考に、閉経前後の子宮内膜症への対応について説明します。

 

閉経前のエストロゲン分泌

脳の下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、その働きにより卵巣にある卵胞からエストロゲンは分泌されます。
更年期になり卵巣の働きが低下すると、卵胞をもっと働かせようとしてFSHの分泌が増加します。卵巣に卵胞が残っていれば、最後の力を振り絞ってエストロゲンを分泌しようとします。
さらに、卵巣機能が低下し無排卵となると、排卵後に黄体から分泌されるはずの黄体ホルモンが分泌されなくなります。実は黄体ホルモンには、エストロゲンの作用を抑える働きがあります。つまり、黄体ホルモンが産生されないということは、エストロゲンの“独り舞台”となってしまうことです。
このような更年期のホルモン環境により、閉経前1年ぐらいまでは、エストロゲンは低下せず、むしろ高値になることが多いとも言われています。

 

閉経後のエストロゲン分泌

閉経後1年を経過すると、卵巣で作られるエストロゲンはほぼ消失するといわれています。
ただし、副腎という組織や脂肪組織などでもエストロゲンが分泌されているため、閉経後でも体内のエストロゲンは0にはなりません。
さらに、子宮内膜症患者さんの場合、子宮内膜症組織自体がエストロゲンを産生している可能性があるそうです。
したがって、閉経後だからといって子宮内膜症が全く活動しないとは言い切れず、事実閉経後女性の2~4%に子宮内膜症が認められるとの報告があります。

 

閉経前後の子宮内膜症治療法

妊娠を希望しない閉経前後の方の場合、卵巣子宮内膜症性のう胞(チョコレートのう胞)の大きさや症状によっては、子宮および両側付属器摘出、骨盤内の子宮内膜症病変の切除・焼灼といった手術療法を行うことがあります。
薬物療法としては、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP製剤)や黄体ホルモン製剤を用いることがあります。
LEP製剤は、排卵を抑制し、子宮内膜組織の増殖を抑える効果がありますが、40歳以降に初めて使用する場合、血栓症のリスクが高まるため注意が必要です。
黄体ホルモン剤は子宮内膜組織への直接作用が強く、長期に使用することも可能ですが、副作用として性器出血の頻度が高いことが知られています。
また、閉経間近であれば、人工的に閉経状態にしてエストロゲン分泌を抑制する偽閉経療法を行うことがあります。偽閉経療法は効果が高いものの、骨密度の低下といった副作用があるため、6か月までの使用が勧められています。
実際には、年齢や症状などを考慮し、これらの薬剤を組み合わせて治療しています。

 

閉経後、子宮内膜症の苦しみから解放されたとしても、今度はエストロゲン減少による更年期障害に悩まされることがあります。
そのような場合、子宮内膜症の再発・再燃に注意しつつ、エストロゲンを補うホルモン補充療法を検討して参ります。

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