院長コラム

喫煙が胎児・新生児に与える悪影響

喫煙は人体に様々な悪影響を及ぼしますが、妊婦さんの喫煙は当人だけでなく、胎児・新生児にも大きな影響を与える可能性があります。
今回、医学雑誌「小児科2018年12月号」(金原出版)などを参考に、喫煙が胎児・新生児に与える悪影響について説明します。

 

・出生時の低体重

妊娠中に喫煙すると、摂取されたニコチンの作用によって、胎盤の血管収縮や血管の狭小化が起こり、胎盤機能が低下し胎児への栄養分や酸素の供給が減少します。
また、胎児が利用できる酸素量も減少するといわれています。
その結果、妊婦さんが喫煙することによって、赤ちゃんの出生時体重が平均150g前後減少するとの報告があります。

 

・先天奇形

妊娠中の喫煙と赤ちゃんの先天奇形との調査は数多くありますが、中でも口唇口蓋裂のリスクが高くなることが知られています。
㏠20本以上の場合、20本以下の妊婦さんに比べて、口唇口蓋裂の頻度が1.7倍高くなり、吸う本数が増えれば増えるほど、リスクが高まります。
その他、四肢減数奇形、腎泌尿器奇形、心血管系奇形、脳神経系奇形など、妊婦さんの喫煙は多くの先天奇形のリスクを高めます。

 

・乳幼児突然死症候群(SIDS)

両親とも喫煙者であるとSIDSのリスクは高くなりますが、妊婦さんが喫煙しないだけでもSIDSの発生を約半分に減らすことができる、と言われています。
尚、喫煙本数が多いほど、SRDSの頻度が高くなります。

 

・小児期の肥満と成人期の生活習慣病

低出生体重で生まれた児は、その後肥満になりやすく、成人期になると脂質異常症・高血圧症・糖尿病・動脈硬化・虚血性心疾患の発症リスクが高くなることが知られています。
喫煙妊婦さんから生まれた赤ちゃんは低出生体重児になる頻度が高いため、小児期の肥満や成人期の生活習慣病のリスクも高くなります。

 

・妊娠合併症

海外の研究によると、妊娠中の喫煙により妊娠20週以降の子宮内胎児死亡のリスクが1.2~1.8倍に高くなるとのことです。
また、母児の生命にかかわる常位胎盤早期剥離のリスクは、喫煙妊婦さんは非喫煙妊婦さんに比べて1.4~1.9倍になり、もし喫煙妊婦さんが妊娠高血圧症候群に罹患していた場合は、常位胎盤早期剥離のリスクが5~8倍にも高くなるとのことです。

 

そもそも、初めからタバコは吸わないに越したことはありません。
せめて妊娠を考えるようになったら禁煙しましょう。
遅くても妊娠が判明したら、ご夫婦共々タバコを吸わないようお願い致します。