院長コラム
肥満とがんとの関係 ~運動でがん予防を~
肥満が生活習慣病などの要因になることは広く知られていますが、がんの中にも、肥満との関連が深いものも少なくありません。
今回は、医療情報誌「メディカルトリビューン 2020年5月」の記事から、肥満とがんについての情報を共有したいと思います。
肥満の抑制とがんの予防
肥満者の脂肪組織では炎症が起きており、炎症性サイトカインという物質が大量に発生しています。近年、この炎症性サイトカインが、乳がんをはじめ多くのがんの成長を促すことがわかってきました。
肥満の抑制が予防に繋がるといわれるがんの種類は、「食道腺がん・胃がん・大腸がん・直腸がん・肝がん・胆嚢がん・膵がん・閉経後乳がん・子宮体がん・卵巣がん・腎細胞がん・甲状腺がん」などが記事に挙げられています。
がん患者さんの予後と生活習慣
大腸がん患者さんの診断前後の生活習慣(運動時間とテレビ視聴時間)を検討した報告があります。この研究によると、診断前に「運動時間が長く、テレビ視聴時間が短かった群」は、「運動時間が短く、テレビ視聴時間が長かった群」に比べて、全死亡率が低いことが示されました。また、診断後の生活習慣に関しても、同様な傾向が見られたそうです。
ちなみにこの研究では、運動時間は「中等度から高度の運動を週1時間以上」を「長い」、それ未満を「短い」とし、テレビ視聴時間は「1日3時間以上」を「長い」、それ未満を「短い」としています。
運動による予防効果が期待できるがん
がんに対する運動療法の予防・治療効果は多くの研究で報告されており、運動による直接的な抗腫瘍効果が期待されています。
「運動とがん発症リスク低下」に関して、根拠が十分であるとされているがんは、「大腸がん・乳がん・子宮内膜がん・腎がん・膀胱がん・食道腺がん・胃がん」などで、根拠が限定的とされているのは「卵巣がん・膵がん・前立腺がん」とのことです。
「坐位時間とがん発症リスク上昇」に関して、根拠が中等度レベルであるとされているのは、「子宮内膜がん・大腸がん・肺がん」とのことです。
また、乳がんと大腸がんは「診断前の運動」も「診断後の運動」も、がん発症リスクが低下する可能性が指摘されています。
日ごろから、長時間座ってテレビを見る生活を避け、定期的な運動習慣を身に着けることが、ある種のがんの予防(婦人科領域では乳がん・子宮体がん・卵巣がん)に繋がる可能性があります。
脂肪の減少を目的とする場合は、ややきつめの有酸素運動を1日30~60分、1週間に3~4回が望ましいとの考えがあります。
特に、肥満の方は食生活を見直すと同時に、運動習慣を心がけましょう。