院長コラム

更年期女性における甲状腺機能異常について

更年期の女性に、甲状腺機能の異常がみられることは少なくありません。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の男女比は約1:4で20~50代に多く、甲状腺機能低下症(橋本病)の男女比は約1:20で20~60代に多いことが知られています。
更年期障害に対してホルモン治療を行っても改善しない時には、甲状腺機能異常が隠れている可能性があります。
今回は、「女性医学ガイドブック 更年期医療編2019年度版」(日本女性医学学会編)を参考に、更年期女性における甲状腺機能異常についてお伝えします。

 

 

甲状腺機能亢進症の症状

甲状線機能亢進症は、発汗・動悸・不眠・焦燥感・いらいら・月経不順・暑がり・易疲労感など、更年期障害でもよくみられる症状を来たすことがあります。

その他、息切れ、下痢、体重減少、手指振戦、高血糖などを認めることがあり、循環器疾患、消化器疾患、神経内科疾患、糖尿病などとの鑑別が必要になるケースもあります。

 

 

甲状腺機能低下症の症状

甲状腺機能低下症は、易疲労感・めまい・記憶力低下・うつ状態・月経不順・皮膚乾燥・脱毛など、やはり更年期障害でもみられる症状が多く、さらに精神疾患との鑑別も必要になります。

その他、寒がり、便秘、体重増加、筋力低下、浮腫、コレステロール高値、肝機能異常など、様々な内科的疾患にもみられる症状をきたすことがあります。

 

 

当院での更年期女性の甲状腺機能検査

当院では、月経不順・無月経あるいは更年期障害を主訴に来院された40~50代女性に対し、更年期症状問診票にご記入頂き、血液検査を致します。血液検査の内容は、閉経の診断のためのエストロゲン(E2:エストラディオール)、卵胞刺激ホルモン(FSH)などのほか、甲状腺機能異常を調べるために甲状腺ホルモン(fT3・fT4)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)を検査します。

fT3・fT4が高値でTSHが低値であると甲状線機能亢進症が疑われ、fT3・fT4が低値でTSHが高値であると甲状腺機能低下症が疑われます。もし、甲状腺機能異常が疑われた場合は、甲状腺疾患に詳しい内分泌内科(田園都市線桜新町駅近くの「とも内科クリニック」、用賀駅近くの「あきら内科」など)へ紹介します。

 

 

更年期は様々な症状が現れますが、必ずしも女性ホルモンの低下だけが原因ではありません。
甲状腺機能が亢進しても、低下しても、更年期障害と紛らわしい症状を認めるため、診断するには各種ホルモン検査が必要になります。
「単なる気のせい」とは思わず、前述の症状が見られた更年期女性の方は、婦人科または内科を受診しましょう。