院長コラム
排卵予知の方法と性交の時期
新型コロナウイルス感染拡大のため、不妊症専門施設への受診を控えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。中には、受精しやすい時期に夫婦生活を持つことで、しばらくは様子をみようとお考えのご夫婦も少なくないかもしれません。
今回は、「女性内分泌クリニカルクエスチョン90」(診断と治療社)を参考に、排卵予知の方法と性交の時期について説明します。
排卵のメカニズム
月経が始まると、脳の下垂体前葉から卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されます。FSHは卵巣に作用し、卵子を入れている卵胞を大きくさせます。大きくなった卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌され、脳下垂体前葉に働きかけ、黄体化ホルモン(LH)の分泌を促します。エストロゲンの上昇が続くと、LHの分泌が急上昇しますが、この現象をLHサージといいます。LHサージによって、成熟した卵胞が弾けて卵子が飛び出ます。これを排卵といい、この時期に性交すると妊娠の確率が高くなります。排卵後、卵胞は黄体という組織に変わり、妊娠維持に必要な黄体ホルモンが分泌され、基礎体温が上昇します。
LHサージと排卵のタイミング
LHサージの持続時間は約48時間で、
① 上昇期 :14時間
② ピーク期:14時間
③ 下降期 :20時間
となっています。
排卵は、LHサージ開始から35~44時間(約1日半~2日)の間、つまりピーク期の半日後から24時間後あたりで起こるといわれています。
尿中LH検査キット(LHキット)を用いた排卵予知
婦人科外来では、尿中LH測定や超音波検査による卵胞計測などを組み合わせて、排卵を予知しています。ただし、自宅で排卵を予知する場合、市販のLHキットの単回測定だけでは上昇期・ピーク期・下降期の区別がつきません。そこで、これまでの基礎体温表から推測される排卵予定日(低温相の最終日頃)の少し前から、LHキットで連日検査を行うことが勧められています。
しかも、LHは半日で大きく変化しますので、1日2回の検査が推奨されています。もし、1日1回の場合であれば、午前11時から午後3時の時間帯に検査を行うとLHサージがとらえやすいとのことです。
性交のタイミング
「精子の受精能力は約2~3日」、「排卵後の卵子の寿命は約24時間」、「尿中LH検査陽性から2日以内に排卵が起こる確率は90%以上」、「排卵前日の性交が最も妊娠率が高い」などのデータから、「LHキットが陽性になった日と翌日」に性交すると妊娠する可能性が高くなる、といわれています。
ただし、あまり気にし過ぎてしまうと性交できなくなる場合もあるため、「LHキット陽性になった日から数日以内に数回程度性交できればいい」ぐらいの気持ちでいいかもしれません。
市販のLHキットだけでは、正確に排卵時期を予知することは困難です。
それでも「ステイホーム」週間の今、少しでも妊娠の確率を上げる有用なツールであることは間違いありません。
あまりこだわり過ぎないように、LHキットを上手にご利用頂ければと思います。