院長コラム

当院で分娩される方は妊娠中“葉酸+マルチビタミン”サプリメント「エレビット」の摂取を

妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸(ビタミンB群の一種)不足が、二分脊椎などの胎児の障害リスクを増加させることは、広く知られるようになりました。
ただし、妊娠中期以降の葉酸やマルチビタミンの有用性ついてはあまり知られていないのが現状です。
今回は、「臨床婦人科産科 2022年5月号」の記事を参考に、妊娠中に“葉酸+マルチビタミン”サプリメントを摂取することの意義ついて、情報共有したいと思います。

 

悪玉物質「ホモシステイン」

全ての細胞にとって、「メチオニン」という必須アミノ酸が適切に代謝されることが必要であり、そのためには葉酸だけでなく、ビタミンB6、ビタミンB12といったマルチビタミンが不可欠です。
もし、これらのビタミンが不足してしまうと、メチオニンが代謝する過程で生じる「ホモシステイン」という悪玉物質が蓄積してしまいます。
この悪玉物質は血管内皮を障害することが知られており、妊婦さんの場合この悪玉物質の影響で、妊娠初期であれば胎盤の形成不全、妊娠中期~後期であれば胎盤機能不全や胎盤循環不全を引き起こす可能性があります。

 

胎盤関連産科合併症

ホモシステインの蓄積によって胎盤の機能が低下すると、「胎盤関連産科合併症」をきたすリスクが増加します。
胎盤関連産科合併症とは、母児に重篤な障害を与える疾患群で、妊娠高血圧腎症・胎児発育不全・常位胎盤早期剥離・早産・後期死産などが含まれます。
つまり、葉酸+マルチビタミンの不足が母児の健康を損ね、命を危険にさらすということです。

 

葉酸+マルチビタミンの効果

妊娠前から妊娠初期にかけて葉酸+マルチビタミンのサプリメントを摂取することは、児の二分脊椎などの神経管閉鎖障害や初期流産の予防に繋がります。
さらに、妊娠中期から後期にかけてサプリメントを摂取することで、胎盤関連産科合併症の発生率を減少させることもできます。特に常位胎盤早期剥離は、30%以上リスクが低下するとの報告があります。
当院でも、葉酸+マルチビタミンのサプリメントである「エレビット」を全妊婦さんに推奨して以来、常位胎盤早期剥離、妊娠36週未満の切迫早産による母体救急搬送は経験していません。

 

日本人やアジア人は胎盤関連産科合併症になりやすい事が知られています。
また、現代の日本人の妊婦さんは、葉酸、ビタミンC、ビタミンD、鉄、カルシウムなど多くのビタミン・ミネラルに関して、食事による摂取量が推奨量に達していません。
是非、妊娠前から出産されるまで、お母さん自身と赤ちゃんのために、積極的に「エレビット」などの葉酸+マルチビタミンのサプリメントを摂取するようにしましょう。