院長コラム

子宮筋腫・子宮内膜症に対する偽閉経療法二つのタイプ

子宮筋腫や子宮内膜症は、エストロゲンという女性ホルモンの影響で増大・増悪することが知られています。
そのため、エストロゲンの分泌を抑えて、人工的に閉経状態にする“偽閉経療法”が薬物療法の中心となっています。
今回は、エストロゲン分泌のメカニズムと、偽閉経療法の二つのタイプについて説明します。

 

エストロゲン分泌の流れ

脳にある「視床下部」という場所から「性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)」が分泌されます。
このホルモンは、同じく脳にある「下垂体前葉」にあるGnRH受容体(受け皿)に結合します。すると、下垂体前葉から「卵胞刺激ホルモン(FSH)」が分泌されます。
FSHは卵巣にある卵胞(卵子を入れている袋)を刺激し、卵胞ホルモンと呼ばれるエストロゲンを分泌させます。
もし、エストロゲンの分泌を抑えようとするならば、下垂体前葉から分泌されるFSHの分泌を抑える必要があります。
さらにそのためには、下垂体前葉にあるGnRH受容体の作用を低下させることが有用です。
その働きがある薬剤を「GnRHアナログ製剤」といい、現在“GnRHアンタゴニスト”と“GnRHアゴニスト”の 2種類の薬剤があります。

 

GnRHアンタゴニスト~GnRH受容体に蓋をする~

GnRHアンタゴニストは、自前のGnRHがGnRH受容体に結合する前に、GnRH受容体に蓋をします。
その結果、GnRHは受容体に結合することができず、FSHの分泌が低下し、エストロゲンは減少します。
GnRHアンタゴニスト製剤である「レルミナ錠」は、1日1回毎日同じ時間の食前に服薬します(初回は月経1~5日目から開始)。
もし、飲み忘れ、服薬時間のずれ、食後の服用など、正しく服用ができていないと、効果が期待できません。
ただし、きちんと服薬すれば、次の月経から止まり、服薬を中止すれば、約一か月程度で月経が再開します。いわゆる“キレがいい”薬剤です。

 

GnRHアゴニスト~GnRH受容体を減らす~

一方、GnRHアゴニストは受容体に結合するものの、GnRHアンタゴニストとは異なり、持続的にGnRH受容体を刺激し続けることで、寧ろ一時的にFSH、そしてエストロゲンの分泌を増加させます。
しかし、GnRH受容体の性質として、刺激が長期間にわたると、バランスを取ろうとしてGnRH受容体の数を減らそうとします。その結果、FSH、エストロゲンの分泌が低下します。
GnRHアゴニスト製剤でよく使用されるのが、4週間に1回皮下注射をするだけでいい「リュープロレリン注」です。
治療開始と月経が止まる時期、治療終了と月経が再開する時期が1~2か月ずれることが特徴です。つまり、“タイムラグがある”薬剤です。

 

「レルミナ錠」も「リュープロレリン注」も、子宮筋腫・子宮内膜症に対する治療効果は同等です。
また、どちらも更年期障害、骨量低下などの副作用があり、基本的に6か月までしか治療できません。
病態や生活スタイルを考慮し、2種類の薬剤を使い分けていますので、是非ご相談下さい。