院長コラム
妊婦さん・授乳婦さんの花粉症に対する当院での薬物療法
寒さも一段落つき、春めいた日が増えてきましたが、この季節問題となってくるのが花粉症です。
今回は、妊婦さん・授乳婦さんの花粉症に対する当院での薬物療法について、「薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改訂3版」(南山堂)の情報も交えながら、説明します。
妊婦さんへの薬物療法
妊娠中の服薬は胎児への影響が否定できないため、特に妊娠12週頃までは注意が必要です。
当院では、妊娠初期は点眼薬(インタール点眼薬など)や点鼻薬(インタール点鼻約など)で経過観察することが多く、あまり鼻炎症状が改善しない場合には漢方薬(小青竜湯:ショウセイリュウトウ)を処方しています。
妊娠初期でも症状が強い場合は、点鼻薬・点眼薬に加えて第二世代の抗ヒスタミン薬を併用することがあります。数ある第二世代抗ヒスタミン薬のほとんどは、添付文書で「妊娠中有益性投与」とされており、妊婦さんも服用が可能です。
したがって、もし非妊娠時に第二世代抗ヒスタミン薬を服用しており、それが有効であれば、妊娠中も同じ製剤を服薬して頂いて問題ありません。
尚、「妊娠と授乳」では、特に「ザイザル」「ジルテック」「クラリチン」が「安全」と評価されており、当院でも特に希望される薬剤がない場合は「ザイザル」を第一選択としています。
また、最近「ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストナトリウムなど)」である「シングレア」「キプレス」をアレルギー性鼻炎治療薬として服用している方が増えてきました。これらも、妊娠中安全に服用することができるため、妊娠判明後に他剤へ変更する必要はありません。
授乳婦さんへの薬物療法
授乳している時に服薬すると、薬物の成分が母乳に移行し、母乳を飲んだ赤ちゃんに影響を及ぼすことを心配される方も多いと思います。
ただし、花粉症に用いる薬剤のほとんどは母乳への移行濃度は少なく、母乳を中断することなく服薬が可能です。
ちなみに「妊娠と授乳」では、第二世代抗ヒスタミン薬のうち「アレグラ」「ディレグラ」「ジルテック」「ザイザル」など、モンテルカストナトリウムの「シングレア」「キプレス」は「安全」と評価されています。当院では、授乳婦さんに対しても「ザイザル」を処方することが多いです。
基本的には妊娠中も授乳中も、花粉症に対して薬物を使用することは可能です。
しかし、花粉症対策で最も重要なことは“花粉を体内に入れないこと”です。
是非、適切にマスクを使用し、花粉症用のメガネをかけ、できるだけ花粉が飛散しやすい日の外出を避けるなど、花粉症対策に心掛けましょう。