院長コラム
妊娠前・妊娠期・産後は鉄欠乏性貧血の管理が大切
体の隅々まで酸素を運ぶヘモグロビンの産生には、鉄が不可欠であり、鉄が少ない貧血を鉄欠乏性貧血といいます。
鉄欠乏性貧血は様々な心身トラブルの原因になりますが、特に妊婦さんの場合は胎児・妊娠・産後の育児などに多大な悪影響を及ぼします。
今回は、妊娠前・妊娠期・産後それぞれの時期に大切な鉄欠乏性貧血の管理について情報提供致します。
妊娠前は貧血の原因疾患の治療
鉄欠乏性貧血の主な原因は①鉄の摂取量が少ない事、②出血で鉄が外にて出ていく事、の二つが考えられます。
将来妊娠を考えている方は①の対策として、思春期から鉄・ビタミン・たんぱく質を中心にバランスの取れた食生活を心がける事が必要です。
また、性成熟期女性の場合、過長月経(月経持続日数が8日以上)、過多月経(2-3㎝以上の血の塊が見られる、1-2時間おきにナプキンを交換するなど)も鉄欠乏性貧血の原因となります。
子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内ポリープが過長月経・過多月経の原因になる事があり、②の対策として、ホルモン製剤や止血剤による薬物療法、筋腫核出術や子宮内膜ポリープ切除術といった手術療法を行うことがあります。
血中ヘモグロビン値が12g/dl未満の場合、食事管理の改善に加えて、
鉄剤の内服薬(当院では主にリオナ錠を使用)も勧められます。
妊娠中は母児のために貧血治療
妊娠期は、生理的に血液が薄まってサラサラ傾向になるため、見かけ上は軽度貧血になります。これは、母体の心臓にあまり負担をかけずに、胎盤・臍帯を通って赤ちゃんに血液を送り届けるため、とも言われています。
しかし、妊娠初期・後期にヘモグロビン値:11g/dl未満、中期に10.5 g/dl未満になっている場合、胎児の発育が不良となるリスクや早産(妊娠37週未満のお産)になってしまうリスクが高まります。
また、分娩様式が経腟であっても、帝王切開であっても、予期しない大出血となる場合があります。妊娠中は適切な血中ヘモグロビン値になるよう、鉄剤の内服薬を積極的に使用し、分娩時多量出血に対しては必要に応じて鉄剤の点滴投与を行う事もあります。
お産後は心身の速やかな回復のために
妊娠中には、明らかな鉄欠乏性貧血がみられなかった方も、分娩時の出血量によっては、産後に鉄欠乏性貧血になってしまう事も少なくありません。
産後貧血は、疲労感、乳汁分泌低下、産後うつなどに繋がる可能異性があるため、速やかな貧血治療が望まれます。
当院では、鉄剤だけでなく、人参養栄湯、キュウ帰調血飲といった漢方薬を使用することがあります。
当院では妊婦健診中(主に妊娠34週まで)、2~3回の血液検査を行い、ヘモグロビン値やフェリチン(貯蔵鉄)値を参考に治療を行っています。
ただし、鉄の内服薬は、胃痛や嘔気嘔吐などの消化器症状が強い方もいらっしゃいます。
まずは、貧血予防として、妊娠前からバランスのとれた食生活を心がけるようにしましょう。