院長コラム
女性のライフステージ別の不定愁訴
女性の生涯は、エストロゲンという女性ホルモンの分泌の変化から、思春期・性成熟期・更年期・老年期といったライフステージに分けられます。
そして、それぞれのステージには特徴的な症状があるともいわれています。
今回は、「日本女性医学学会雑誌 2024年7月号」に掲載されていました「10~70代女性のライフステージ別愁訴の研究結果」について、情報共有したいと思います。
思春期女性は「情緒不安定で不安」「だるい」
15~19歳といった思春期にあたる女性は、エストロゲン分泌が急増している時期です。
その影響があるのか、心の症状として「情緒不安定」「落ち込む・不安」「イライラ」、体の症状として「だるさ」「肌荒れ・眠気」を訴える方が多かったそうです。
これらの症状は、月経困難症や月経前症候群(PMS)にもみられ、多くの思春期女性の代表的な心身トラブルといえます。
性成熟女性は「イライラして、神経質」「頭痛」
性成熟期は、エストロゲン分泌が高値安定している時期ですが、就職、結婚、妊娠、出産、子育てなど、取り巻く環境が劇的に変化する時期でもあります。
心の症状では情緒不安に加えて、イライラや神経質などが増加し、体の症状ではだるさに加えて、頭痛の増加が特徴のようです。
また、イライラの背景として、「人」「子供」「家族」など周囲の身近な人から及ぼされる影響が、特に性成熟期の後半になるにつれて強くなっていくとのことです。
更年期女性は「のぼせ、発汗、冷え」「焦燥感」
更年期は、エストロゲン分泌の急激な低下により、心身の多彩な症状がみられる時期です。
体の症状として、のぼせ、発汗、冷え、肩こり、動悸、めまいなどの典型的な更年期症状が急増します。
心の症状として焦燥感の増加が目立ちますが、身体不調による老後や第二の人生に対する不安感が背景にあるようです。
老年期女性は「膣・尿トラブルや物忘れ」「落ち込む、不安」
老年期はエストロゲン分泌が低値で安定しますが、加齢による諸症状もみられる時期です。
体の症状として手のこわばり、不眠、食欲不振などは更年期から継続しますが、膣・尿トラブル、物忘れの増加が老年期に特徴のようです。
特に65歳以降になると、落ち込む・不安、イライラ、やる気が出ないなどの心の症状が増加する傾向があるようです。
女性の心身症状は、エストロゲン分泌・社会的な環境・元々の性格などが絡み合って出現すると言われています。
どの年代の方も、生活に支障を来すような症状がみられましたら、是非婦人科をお訪ね下さい。
我々も、お一人おひとりの訴えに耳を傾けて、皆さんの生活の質を上げるべく、最善の方法を考えて参ります。