院長コラム

多嚢胞性卵巣症候群と診断されたことのある40~50代女性へ

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖年齢にある女性の8~13%に認められる疾患で、無排卵や月経不順の原因となります。
そのため、特に妊娠を希望される年代にとって重要な疾患ではありますが、性成熟期はもちろん女性の生涯にわたり影響を及ぼすことが知られています。
今回、「日本産科婦人科学会雑誌」(2021年11月号)などを参考に、PCOSと診断されたことのある40~50代女性のヘルスケア管理について、情報共有したいと思います。

 

生涯肥満になりやすい

性成熟期のPCOSの方は、一般の方と比べて高度な肥満(BMI≧30:体重[kg]÷身長[m÷身長[m])のリスクが2.8倍も高くなるそうです。
また、ある研究では45歳以上のPCOS女性(平均年齢50.5歳)でも、一般集団と比べてBMIが有意に高く、55歳以上の女性のみの研究でも、BMIとウエスト・ヒップ比(中心性肥満)がPCOS既往の女性で有意に高かったそうです。
つまり、PCOSの女性は、閉経前も、閉経後も、肥満のリスクが高くなると考えられます。

 

2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管系疾患は性成熟期にリスクが増加

通常、これらの疾患は、閉経後に発症頻度が増加することが知られています。
しかし、平均年齢30歳のPCOS女性の耐糖能異常および2型糖尿病は、一般女性と比べて約3倍リスクが高くなるとの報告があります。
メタボリックシンドロームに関しては、性成熟期のPCOS女性は3.4倍リスクが高くなるそうです。
また、心血管系疾患に関しても、性成熟期のPCOS女性で、1.4倍リスクが高くなるといわれています。
つまり、PCOS女性は、閉経前からこれらの疾患と向き合う必要があります。

 

子宮体がんもリスク上昇

PCOS女性は、無排卵に伴いエストロゲンが長期間にわたって子宮内膜を刺激するため、子宮体がんのリスクが高くなることが知られています。
ある研究では、50歳未満では5.7倍、50歳以上では2.0倍発症リスクが高いと報告されています。

 

PCOSの方は、運動習慣や食生活を見なおし、肥満・2型糖尿病・メタボリックシンドローム・心血管系疾患のリスクを減らすようにしましょう。
もし、定期的な健康診断で異常を指摘された場合は、早めに専門医を受診されることをお勧めします。
また、2年に一回の婦人科健診では、子宮頚がん検査だけでなく、可能であれば子宮体がん検査を検討しましょう。