院長コラム
外陰尖圭コンジローマの予防法と治療法
尖圭コンジローマは、主に6型・11型のヒトパピローマウイルス(HPV)による性感染です。女性では、大小陰唇・会陰・腟・子宮膣部・肛門周囲などに乳頭状・鶏冠状のイボが見られます。
今回は「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編)を参考に、外陰尖圭コンジローマの予防法と治療法について説明します。
尖圭コンジローマは4価のHPVワクチン「ガーダシル」で予防できます
現在、我が国で接種ができるHPVワクチンは、「サーバリックス」と「ガーダシル」の二種類あります。「サーバリックス」というワクチンは、子宮頚がんの原因となる16型・18型の二つのタイプに対応するワクチンで、子宮頚がん予防のみに効果がある2価ワクチンです。
一方、「ガーダシル」は16型・18型に加えて尖圭コンジローマの原因となる6型・11型にも対応可能な4価ワクチンです。したがって、子宮頚がんの予防だけを考えた場合はどちらのワクチンでも有効ですが、尖圭コンジローマの予防を考えれば「ガーダシル」を接種する必要があります。
ちなみに世田谷区の場合、小学6年生相当から高校1年生相当までの女子は、無料で「ガーダシル」を接種することができます。高校2年生以降は自費になりますが、26歳までの方はHPVワクチン接種が推奨されており、ご希望があれば45歳まで接種が可能です。
治療の第1選択は「ベセルナクリーム5%」
通常、外陰部病変の治療には「ベセルナクリーム5%」を用います。イボのある部位に適量を1日1回、1日おき週3回、就寝前に塗布し、翌朝、薬剤を石鹸できれいに洗い流します。洗い流すことが不十分であると、皮膚のただれが強くなることがありますのでご注意下さい。
「ベセルナクリーム5%」は処置が簡便で、比較的副作用が少なく、瘢痕などの後遺症を残す心配が少ない上に、再発率が少ないといわれています。使用期間は原則16週間までであり、それまでに治療の効果判定を行います。
尚、腟内や子宮膣部には重篤な粘膜障害が認められるため禁忌となっています。また、妊娠中の使用は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用が可能ですが、妊婦さんの使用例が少ないため、外科療法が第1選択となっています。
必要に応じて「レーザー切除・蒸散」を
当院では、大小陰唇・会陰・肛門周囲の尖圭コンジローマに対して、「ベセルナクリーム5%」による治療後に残存したイボや病理検査が必要と判断した場合には、炭酸ガスレーザーなどを用いて切除し、周辺をレーザー蒸散する治療を行っています。
通常は局所麻酔のみで、15~30分程度の外来処置になりますが、範囲が広い場合は数日に分けて行います。また、痛みが強い場合や全身麻酔をご希望の方には、日帰り入院で静脈麻酔による手術を行います。
術後は、切除や蒸散によって一見治癒したと思われても、3ヶ月以内に約25%が再発するといわれています。そのため、術後3ヶ月間は定期的な診察が必要になります。
尚、腟・子宮腟部、肛門に見られる尖圭コンジローマや病変が広範囲なケース、再発を繰り返すものは、高次施設へ紹介致します。
外陰部尖圭コンジローマは性行為で感染し、潜伏期間が数ヵ月に及ぶことがあるため、症状の有無にかかわらずパートナーにも泌尿器科へ受診してもらうよう、お伝えして下さい。
そして、お互いが治癒するまでは性行為を持たないようにしましょう。