院長コラム
今こそ「子宮頚がんの予防」について考える
4月9日は“子(4)宮(9)”にちなんで、「子宮頚がんを予防する日」に制定されているようです。
子宮頚がんを予防するには、「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種」と「定期的な子宮頚がん検診」が必要です。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2017」を参考に、改めて子宮頚がん予防について考えてみます。
現行のHPVワクチン接種で子宮頚がんの約60~70%の予防が期待
子宮頚がんは、発がん性が高い約15種類のハイリスクHPVの持続感染が原因といわれています。その中でも、悪性度が特に高いタイプは16型と18型であり、現在我が国で承認されているHPVワクチンのサーバリックスとガーダシルは、これらの型に対応したワクチンです。ちなみに、サーバリックスは16型と18型のみの対応ですが、ガーダシルは16型と18型だけでなく、尖圭コンジローマという良性の性感染症の原因である6型と11型にも対応しています。
どちらのワクチンも、16型と18型に関連した感染予防効果と前がん病変発生の予防効果は約100%であり、他のタイプのハイリスクHPV感染を含めた場合でも約60~70%の予防が期待できます。
国や行政はHPVワクチン接種を勧奨していない訳ではない
一時、「国や自治体はHPVワクチン接種を勧めていない」といった情報が流れましたが、あくまでも「積極的な勧奨を一時差し控えている」ということであり、全く勧めていないわけではありません。接種対象者やその保護者に対して、広報誌・ポスター・インターネット・個別の葉書などを利用した勧奨、つまり“多額のお金と手間をかけた積極的な接種の呼びかけ”はしていないだけ、とお考え下さい。
現在でも、予防接種法に基づき定期接種化されたままですし、公費助成もあります。また、厚生労働省や自治体のホームページでも、HPVワクチン接種の有用性や助成についての情報が記載されています。つまり、実際には国も自治体も“消極的に勧奨している”と考えてもいいでしょう。
HPVワクチン接種の恩恵は性交未経験者だけとは限らない
HPVは性交で感染するため、性交を経験する前にワクチン接種することが最も効果的であることは間違いありません。ワクチン接種が最も推奨される対象は10~14歳で、次に優先的に推奨されるのは15~26歳です。さらに、45歳までであれば、臨床試験によるワクチンの有効性が証明されているため、ご希望の方には接種が可能です。
すでに感染しているHPVに対する治療効果はありませんが、子宮頚部細胞診で異形成(がんの手前の状態)が認められている方であっても、現在はまだ感染していないHPVの型(16型または/および18型)に対する将来の感染予防は期待できます。
子宮頚がん検診は自己管理の一環
ただし、現行のHPVワクチンを接種しても、子宮頚がんを100%予防することはできません。そのため、ワクチン接種の有無に関わらす、20歳以上で性交の経験がある方は、2年に1回子宮頚がん検診を受けることが推奨されています。
ちなみに世田谷区では、20歳~40歳の方は毎年、40歳以上の方は偶数年になられる年度に、自己負担800円で子宮頚部細胞診を受けて頂くことができます。ご自身やご主人の勤務先の健康診断や人間ドックなども利用して、2年に1回は子宮頚がん検診を受けましょう。
子宮頚がんは年間約10,000人が罹患し、約2,800人の方が亡くなっており、近年増加傾向にあります。特に20~40歳代で、罹患率の著しい増加が認められています。
是非「HPVワクチン接種」と「子宮頚がん検診」で、ご自身の健康と命を守りましょう。