院長コラム
ホルモン補充療法は60歳を過ぎても継続可能です
我が国のガイドラインでは、ホルモン補充療法(HRT)継続を制限する一律の年齢や投与期間は決められていません。
確かに、閉経後10年以上、あるは60歳以上で新たにHRTを始めると、心筋梗塞などの心血管疾患が上昇するといった報告もあるため、できるだけ閉経後10年未満、50歳代でHRTを開始することが望ましいと考えられています。
しかし、これまでHRTを行っていた方が60歳になったからと言って中止する必要はありません。
今回は「臨床婦人科産科 2025年1・2月合併増大号」(医学書院)などを参考に、HRTの継続期間について説刑します。
65歳を超えてHRT行うメリット
アメリカでの研究になりますが、65歳を超えてHRTを施行することによってリスクが低下する疾患が報告されています。
〇エストロゲン単独療法:主に子宮摘出術後の方
・死亡率 -19% ・乳がん -16% ・肺がん -13% ・大腸がん -12%
・うっ血性心不全 -5% ・急性心筋梗塞 -2% ・認知症 -2%
〇エストロゲン・黄体ホルモン併用療法:子宮を有している方
・子宮内膜がん(子宮体がん) -45% ・卵巣がん -21%
・虚血性心疾患 -5% ・うっ血性心不全 -5%
黄体ホルモン製剤の種類によっては5年以上の継続注意
子宮を有している方が、エストロゲン製剤を長期にわたり単独服用した場合、子宮内膜組織を増殖させ、子宮体がんの危険性が上昇します。
そのため、子宮内膜の増殖を抑え、子宮体がんを予防するために、黄体ホルモン製剤を併用する必要があります。
黄体ホルモン製剤の中でも、以前主流であった「プロベラ錠」は5年以上の服薬により、乳がんリスクを若干上げると言われています。
そのため、当院では「プロベラ錠」を服用している患者さんには、その情報を予めお伝えし、服用期間について定期的に相談しています。
ただし、現在主流である天然型ホルモン製剤の「エフメノカプセル」は、長期にわたり服用しても乳がんのリスクは増加しません。
むしろ、5年以上HRTを行わないと、心血管疾患への予防効果がないため、当院では5年以上の継続をお勧めしています。
あるヨーロッパでの研究では、20年間のHRTで、死亡率の上昇がみられなかったそうです。
それでも当院では、HRT施行中、定期的に乳がん検診・子宮体がん検査を受けて頂いており、早期発見に心掛けております。
今後も、HRT継続のメリットとデメリットをお伝えし、ご本人のご希望を確認しながら治療方針を決定して参ります。