婦人科疾患
中高年女性の心身の変化と症状
女性の一生には様々なステージがありますが、特に40代から60代は、身体的・心理的・社会的に“大きな節目”と言えるのでないでしょうか。
この中高年期を幸せに過ごすためには、「この時期に何が起きているのか?」を知っておくことは、今まさに中高年期にいらっしゃる女性はもちろん、これから中高年期を迎える女性にとっても大切であると思います。
そこで今回は、「中高年女性のケア・アップデート」(日本産婦人科医会 研修ノートNo.114)を参考に、中高年女性の心身の変化と症状について整理してみたいと思います。
女性ホルモンの低下
性成熟期女性は、月経終了後に卵巣の卵胞からの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」分泌が増加します。エストロゲンには子宮内膜を厚くさせる作用があります。そして、排卵後の卵胞は黄体という組織に変化し、エストロゲンだけでなく「プロゲステロン(黄体ホルモン)」を分泌します。プロゲステロンには子宮内膜の増殖を抑え、安定させる作用があります。
ところが、中高年期に差し掛かると、卵巣機能が低下し始め、排卵の頻度が減っていき、無排卵の月経が増えていきます。つまり、プロゲステロンが低下し、子宮内膜が不安定になります。
一方、エストロゲンは中高年期に一時増加することがありますが、その後急激に減少して、閉経に向かっていきます。
このような女性ホルモンバランスの変化により、閉経前に月経不順・過多月経・不正出血などをきたす女性は少なくありません。
身体的変化
エストロゲンが減少すると、ほてり・発汗・動悸などの自律神経系の症状がみられるようになります。これを更年期症状といい、日常生活に支障をきたすようになると更年期障害と呼ばれます。
また、エストロゲンには骨を丈夫にする作用、皮膚や粘膜を健康にする作用、血管を若く保つ作用など、女性の健康維持に欠かせない様々な働きがあります。
このようなエストロゲンの分泌が低下してしまうと、骨が溶けて骨粗しょう症のリスクが高まり、皮膚や粘膜のコラーゲン合成が低下して乾燥・萎縮が進み、血管の弾力性が低下して動脈硬化が進行することになります。
また、中高年期に入ると、筋肉量が減少し、脂肪量、特に内臓脂肪が増え、基礎代謝が低下し、体重が増加していきます。
心理社会的変化
さらに、女性ホルモンの低下に伴い、脳内にあるセロトニン、ドーバピンといった神経伝達物質が変化し、抑うつや不安感などの精神症状がみられるようになります。
また、子供の独立、親の介護、配偶者の喪失、退職など家庭環境や社会的役割の変化がみられるのもこの時期で、心理的ストレスや孤立感が強くなることがあります。
このような中高年期にみられる強い精神症状も、更年期障害の一つと考えられます。
以上のように、中高年期はエストロゲン分泌の低下や心理社会的ストレスなどにより、様々な身体的・精神的症状が出現する事があります。
これらの対策として、バランスの取れた食事・適切な運動・良質な睡眠といった生活習慣の改善を心がけることが大切です。
その上で、婦人科を受診し、女性ホルモン剤・漢方薬・抗精神薬などの薬物療法についてご相談されることをお勧めします。