院長コラム

2019年の「3つの取り組み」

今年は平成から令和へ時代が移った記念すべき1年でした。本年最後の日のコラムは、2019年に当院が導入した、3つの取り組みについてお伝え致します。

 

 

○ 手動真空吸引法(MVA)導入

昨年まで当院では、妊娠12週未満の流産手術や人工妊娠中絶手術には、金属製の吸引管、胎盤鉗子、キュレット(掻爬用の匙)を用いて、電動吸引法+掻爬術を行なっていました。ただし、キュレットを用いた掻爬術を過剰に行なうと、子宮内膜が癒着し、次回の妊娠が困難になる可能性があるため、近年キュレットの使用は極力控える方向にあります。さらに、WHO (世界保健機関)が、妊娠初期の中絶術の方法として「手動真空吸引法は、より安全である」と、ある報告書で推奨しました。

そこで当院では、2 019年2月から妊娠10週未満の流産手術および人工妊娠中絶手術は、原則としてプラスチック製の比較的軟らかい吸引管を用い、キュレットをほとんど使用しない手動真空吸引法に切り替えました。ただし、従来と同様、ラミセルを用いた頚管拡張、静脈麻酔処置は行なっています。

術後、子宮内に血液貯溜を認めることがありますが、必要と判断した場合には静脈麻酔せず、あまり痛みを感じない様に比較的低い吸引圧にし、外来診療の一環として手動真空吸引法にて処置します。

子宮に優しくリスクは低く、効果も電動吸引法と変わらない手動真空吸引法は、今では当院の標準術式となっています。尚、妊娠10週以降の手術に関しては妊娠組織が多いため、胎盤鉗子と電動吸引管による内容除去術とキュレットによる掻爬術を組み合わせて行なっている旨、ご了承下さい。

 

 

○ 子宮筋腫治療薬「レルミナ錠」導入

子宮筋腫は女性ホルモンの影響で増大し、場所や大きさによっては経血量を増やし、結果的に貧血をきたす事があります。薬物療法として、人工的に女性ホルモンの分泌を抑制し、あたかも閉経後の状態にさせる「偽閉経療法」を行なうことがありますが、従来は月に1回皮下注射をするタイプ(リュープロレリン注)が主流でした。

しかし、皮下注射のタイプは、投与翌月の月経は認められ、むしろ通常よりも多いことが少なくありません。今年認可された子宮筋腫治療薬「レルミナ錠」は連日1錠ずつ服薬する内服薬であり、服用開始の翌月から月経を抑えることができます。原則として、皮下注射タイプと内服薬タイプのどちらも6か月までしか使用できませんが、最終的な子宮筋腫縮小効果や更年期症状様・骨密度低下などの副作用に差はありません。

毎日の服薬が面倒で、月に一回の皮下注に抵抗がない方には「リュープロレリン注」を行なっていますが、現在当院では「レルミナ錠」が主流となっています。

 

 

○ アノワ41Dジェル導入

女性ホルモンが減少すると、外陰部や腟は萎縮し、乾燥してきます。ホルモン補充療法を行なうことがありますが、それだけでは症状が改善しない方も少なくありません。また、女性ホルモンはしっかり分泌されているものの、デリケートゾーンのトラブルのため、生活の質が低下してしった性成熟期女性もいらっしゃいます。

従来は、痒みや痛みなどの症状が出現してから、保険診療として外用剤を処方していました。ところが今年、「アノワ41Dジェル」というデリケートゾーン用の保湿ジェルが発売されました。このジェルには様々な成分が含まれており、細胞修復・再生作用、腟内善玉菌の増殖作用、保湿作用、消臭作用など、多様な効果が期待できます。手荒れを防ぐためにハンドクリームを使用する感覚で、デリケートゾーンのトラブルを予防するためのケアとして、非常に有効です。

「アノワ41Dジェル」は医療機関限定品で、保険適応がないため1本3,300円(消費税込)となりますが、当院でも取り扱うになって以来、多くの方々にご使用して頂いております。

 

 

今年は、上記以外でも患者様のお声を参考に設備面・システム面など多くの導入や改善を行ないました。
これからも最新の医療情報に目を向け、皆様のお声に耳を傾け、より良い医療・看護の提供のために、当院は進化し続けて参ります。
来年も宜しくお願い申し上げます。
皆様良いお年をお迎え下さい。