院長コラム

高校1年生対象の生涯健康授業(パート2)について

先日、私が産婦人科校医を務めています都立青山高校で、昨年のパート1に引き続き、性教育授業パート2(スライド動画)を行いました。
パート2では、「避妊法・人工妊娠中絶法」「性感染症・感染症予防」「子宮頚がんとHPVワクチン」について説明しました。
そこで今回は、授業内容の一部を紹介し、情報共有したいと思います。

月経周期による食欲の変化
前回のパート1で月経周期と女性ホルモンについてお話しましたが、その後ある生徒から「月経周期による食欲の違い」についてのご質問を頂きました。
実は、二つの女性ホルモンには、食欲に与える作用の違いが知られています。エストロゲン(卵胞ホルモン)には食欲を抑制する作用があり、プロゲステロン(黄体ホルモン)には食欲を増加させる作用があります(妊娠に備えて栄養を貯めようとするため、とも言われています)。
“月経期”はエストロゲン・プロゲステロンともに分泌が低下するため、食欲が低下する方、増加する方、人それぞれのようです。
また、月経終了から排卵までの“卵胞期”はエストロゲンのみ増加する時期であり、食欲は低下する傾向にあります。
そして、排卵から次回月経までの“黄体期”には二種類の女性ホルモンがともに増加しますが、プロゲステロンの方がエストロゲンよりも主体であるため、食欲が増加する傾向にあります。
もちろん、これらは一般論であり、実際にはかなり個人差も大きいですが、女子の皆さんにとって体調管理の参考になるのでは、と思います。

低用量ピルのメリットと副反応
低用量ピルには主に、「排卵を抑制する作用」「子宮内膜を薄くする作用」「子宮頸管粘液の粘り気を高める作用」の三つがあります。
これらの作用により、高い避妊効果を発揮するだけでなく、子宮内膜を薄くし、そこから分泌される“痛み物質”の産生を抑える事で、月経困難症の治療効果も期待できます。
また、月経前症候群(PMS)の要因として、排卵後に分泌されるプロゲステロンの作用や、エストロゲン・プロゲステロンの減少などが言われています。そのため、低用量ピルを服用することで卵胞発育や排卵を抑え、自然のエストロゲン・プロゲステロンの分泌を抑制・安定化させることにより、PMSの改善も期待できます。
このような有用な低用量ピルですが、血栓症というリスクも少ないながらもあるため(10,000人に3名程度)、服用に当たってはこまめに水分を摂取し、程度に体を動かすなどの血栓予防が大切です。
特に、前兆のある片頭痛持ちの方は血栓症になりやすく、低用量ピルが禁忌であるため、血栓症リスクのあるエストロゲン成分が入っていない、黄体ホルモン製剤(ミニピルなど)の服用が勧められます。

HPVワクチン接種が有効な、子宮頚がん以外の疾患
現在日本で主流になっているHPVワクチンは9価ワクチン「シルガード9」であり、性交経験前に接種することで子宮頚がんの発生リスクを約90%低下することが知られています。
さらに、HPVが要因の一つと言われている外陰がん・膣がん、男女ともに発生する可能性がある中咽頭がん・肛門がん、性感染症である尖圭コンジローマ、男性特有の陰茎がんに対しても、HPVワクチン接種の効果が期待できます。

産婦人科医としての授業でしたので、女性に関する内容が多くなりましたが、男子生徒の皆さんにも熱心に聞いて頂けたようです。
むしろ、女性の月経に関するトラブルについては男子にも知っていて欲しいですし、「性的行為にはお互いの同意が必須であること」や「避妊・性感染症予防のために適切なコンドーム装着が重要であること」などは、男子の皆さんにこそ理解して欲しいと思っております。
来年度以降も「自分を大切する」「他者を尊重する」「正しい知識を学ぶ」という理念を軸に、生涯健康に関する情報を中高生にわかりやすく提供していきたい、と考えております。