院長コラム
閉経後増大する子宮筋腫の管理
子宮筋腫とは、子宮にできる良性の筋肉のコブであり、比較的多くの成人女性にみられます。
エストロゲンや黄体ホルモンといった女性ホルモンの影響で増大し、女性ホルモンが減少する閉経後は、筋腫の発育が停止あるいは縮小することが一般的です。
ただし、中には閉経後に増大する方もいらっしゃいます。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」「東京産科婦人科学会会誌 2023年4月」などを参考に、閉経後増大する子宮筋腫の管理について説明します。
子宮肉腫の可能性があれば高次施設へ紹介
当院の外来では、内診および超音波検査、必要に応じて血液検査やMRI検査依頼(近隣の検査のみの施設)を行っています。
これらの診察・諸検査で、急速な増大・腫瘍内の出血や変性・LDLという血液検査項目の上昇がみられた場合、子宮肉腫という筋肉の悪性腫瘍である可能性が否定できません。
確定診断するには子宮を摘出し、病理検査を行う必要があります。
そのため当院では、子宮肉腫の可能性がある方に対し、東京医療センター、東邦大学医療センター大橋病院、慶應義塾大学病院など、婦人科腫瘍の専門医がいらっしゃる高次施設へ紹介しています。
良性の筋腫でも転院の可能性が
各種検査で子宮肉腫である可能性が低い場合は、原則として当院で経過観察させて頂く事になります。ただし、子宮筋腫の疼痛がある場合、筋腫のサイズが10cm以上ある場合、あるいはご本人のご希望がある場合には、前述の高次施設へ紹介することもあります。
なぜ閉経後に筋腫が増大するのか?
閉経期に女性ホルモンの分泌が低下すると、それまで子宮筋腫を養っていた血流が減少します。その結果、通常であれば筋腫は縮小しますが、場合によっては筋腫の組織が変性し、液体や様々な物質の貯留が増大するため、筋腫全体が大きくなってしまう事があるそうです。
また、血中のエストロゲンが減少すると、副腎という臓器からアンドロゲンという男性ホルモンの分泌量が増加します。実は、アンドロゲンはアロマターゼという酵素の働きでエストロゲンに変換されます。そして、子宮筋腫の細胞から、そのアロマターゼが産生されている事が知られています。
つまり、閉経後に男性ホルモンが増えても、アロマターゼの作用で女性ホルモンにどんどん変えられてしまい、結果的に子宮筋腫が増大してしまう、とも言われています。
通常、閉経後の子宮筋腫は治療する必要はありません。
ただし、子宮肉腫が疑われた場合、あるいは巨大子宮筋腫により深部静脈血栓症や腎不全などのリスクがみられる場合などは、手術の適応となります。
したがって、特に閉経前から子宮筋腫を指摘されていた方は、閉経後になっても定期的に婦人科を受診しましょう。