院長コラム

若年(思春期)妊婦さんの産科的なリスク

日本国際保健医療学会の定義によると「若年妊娠」とは、20歳未満の妊娠を指し、世界的に医学的、経済的、社会的な様々な問題が指摘されています。
一方思春期とは、第二次性徴出現から初経を経て、月経周期がほぼ順調になるまでの8歳~18歳頃と言われており、10~16歳頃にかけて経腟分娩に適した「女性型骨盤」へ変化していきます。
今回は、若年(思春期)女性が注意すべき妊娠・分娩のリスクについて、「思春期学」(vol.42 No.2 2024)を参考に情報共有したいと思います。

常位胎盤早期剝離のリスクが約3倍に!
常位胎盤早期剝離(早剝)とは、赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまう病気で、胎盤機能不全による胎児死亡、大出血による妊産婦死亡など、母児の生命を脅かすことが知られています。
ある報告によると、20歳未満の妊娠では20~24歳の妊娠に比べて、早剝になるリスクが約2.8倍高いとのことです。
早剝の原因について不明な点も多いですが、従来から早剝要因として指摘されている「妊娠中の喫煙」や「35歳以上の高齢妊娠」よりも「10代妊娠」の方がリスクが高い、という調査結果は注目すべきと思われます。

生まれた赤ちゃんの体重や元気具合にも影響が!
生まれた時の体重が2,500g未満を低出生体重児といい、出生体重が2,500g以上の赤ちゃんに比べて様々なリスクが高いことが知られています。
また、生まれた赤ちゃんの元気具合を評価する際、心拍数、呼吸状態、皮膚色などの観察項目を点数化したアプガースコアを用います。
ある研究では、20歳未満の妊婦さんから生まれた赤ちゃんの方が、20~24歳の妊婦さんの赤ちゃんに比べて、低出生体重児およびアプガースコア低値のリスクが高い、と報告されています。
その原因として、10代の母体の身体的未熟性や喫煙(!)の影響があるのでは、と類推されています。

妊娠期うつ病のリスクも3倍!
そもそも、10代女性は精神的に不安定であるにも関わらず、この時期に妊娠・出産・育児を経験するとなると、尋常でないストレスがかかります。もちろん、予期しない妊娠であることが多いため、経済的な厳しさもメンタルヘルスに影響を及ぼすと思われます。
ある報告では、20歳未満の妊娠では、35歳以上の妊娠に比べて、うつ病発症のリスクが3倍程度高いとのことです。

若年者の妊娠は経済的・社会的リスクが高いということは、ほとんどの大人の方々は(人生経験が豊富であればあるほど)経験的・直感的に理解されていると思います。
一方で、心身共に発達途上の10代(特に思春期)女性にのしかかる妊娠・分娩・育児の肉体的・精神的ストレスについては、過小評価されているのかも知れません。
ほぼ100%の避妊法・緊急避妊法・体に負担の少ない人工妊娠中絶法について、思春期の方々へ啓発することが今後さらに必要であると考えています。